保育と遊びのプラットフォーム[ほいくる]

星空観察で、図鑑と本物を行き来する〜こどもと一緒に出会いたい 図鑑編集者 大藪 百合さん〜

竹原 雅子
掲載日:2020/12/25
星空観察で、図鑑と本物を行き来する〜こどもと一緒に出会いたい  図鑑編集者 大藪 百合さん〜

2020年11月20日に発刊した、ほいくる初のリトルプレス『こどもこなた』。
その中の企画のひとつ「こどもと一緒に出会いたい」に載せきれなかったお話を、web記事特別号としてお届けします。

保育関係者、編集者や遊び場づくりの専門家…
子どもにまつわる仕事をされているみなさんに聞いてみました。
ー あなたが子どもと一緒に体験、体感したいモノやコトは、なんですか…?

小学館図鑑編集者・大藪百合さんのお話をご紹介します。


星空観察で、図鑑と本物を行き来する

大藪 百合さん/小学館 図鑑編集部 宇宙・恐竜担当

2010年、小学館入社。宣伝部を経て、2012年より図鑑へ配属。『小学館の図鑑NEO』シリーズの恐竜・宇宙・星と星座などの編集を担当。休日は、5歳の息子といっしょに何か新しい発見をするのが楽しみ。


図鑑を熱心に読んでくださるお子さんが多く、とてもありがたいのですが、せっかく興味を持ったのなら、図鑑だけで終わるのはもったいないと思っているんです。
やっぱり図鑑は、子どもたちにとって未知の世界への“扉”であってほしい。
図鑑でおもしろいと思ったことは、ぜひ本物に出会ってほしいな、というのが私たち編集者の願いでもあります。

博物館、動物園や水族館、自然体験など子どもたちにぜひ足を運んでほしいのですが、このコロナ禍で気軽に行けなくなってしまったのが残念ですよね。
そんな中でもソーシャルディスタンスを保ちながら楽しめる、星空観察はおすすめです。

私は星と星座の図鑑の編集を担当しています。「都会だと星なんて見られないんじゃないですか?」とよく言われますが、月や金星、夏の大三角やオリオン座など、都会の夜空でも見える星は結構あるんですよ。
息子を保育園に迎えに行き、一緒に星を見ながら帰るんですが、タイミングが合うと土星や木星などもすごく目立ちます。

日の入りの時間が日によって違うこと、月の形が変わっていくこと。毎日帰り道に空を見上げていると、少しずつ動いていく夜空の様子に子どもから気がつくことがあって。
「いいところに気がついたね」って話をしながら「じゃあ、それはどうしてだろう」と帰宅して図鑑で調べてみたり、また逆に図鑑から「お月見っていう行事があるんだね」「今年のお月見はいつかな」と知識を広げていったり。
図鑑と実際の体験を行き来するのは、おすすめの楽しみ方です。


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私自身が星に興味を持つようになったのは、小学校2年生の時の体験がきっかけです。

「しし座流星群」という毎年11月にやってくる有名な流星群があるのですが、例年よりもたくさんの星が流れるというニュースを、流星群がやってくる前日に見たんです。
当時の私は、夜、外へ出ることは悪い事のように感じていたので、恐る恐る母に「あのね、しし座流星群、見てみたいんだけど…」と伝えました。

そうしたら母が「お母さんも見てみたい!」って言ってくれて。その返事に喜んだのですが…流星群がやってくる日は、平日だったんです。
だけど母もノリが良くて「せっかくだから今いる東京より流れ星がきれいに見える、郊外の方に行ってみよう」と、小学校を早退し、母の実家がある栃木まで行くと言い出して。

さすがにそれは…子ども心にすごくドキドキしながら、翌日、職員室に行きました。
当時の女性の担任の先生に「しし座流星群がいつもよりきれいに見えるそうで、今日はお天気も良さそうなので、観察するために早退してもいいですか」って…。

そうしたら先生は「いいなぁ、うらやましいなぁ、ぜひ行っていらっしゃい」「見たことをみんなにも発表してね」と、笑顔で送り出してくれたんです。
おかげで午前中は授業を受け、午後は母と一緒に電車に乗って東京から栃木県へと移動。夕方に仮眠をとって、その夜、しし座流星群を見ることができました。

真夜中の地面にレジャーシートを、その上に布団を敷いて寝転がって母と流れ星を見ました。
広い空を眺めていると、いろんなところからシュンシュンッ、シュンシュンッと、星が流れてくる。


あの日の経験が、今の仕事にもつながっています。

学校を休むことはおすすめではないんですけど(笑)、背中を押してもらったこと、「みんなの前で発表してね」と言ってもらったこと、すごく嬉しかったなぁと今でもはっきりと覚えていて。当時の先生や母には、とても感謝しています。

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インタビュー・文/竹原 雅子



このインタビューが掲載されている、リトルプレス「こどもこなた」


HoiClue初(発)のリトルプレス『こどもこなた』が、完成しました!

子どもと関わるみなさんが、ずっとずっと手元に置いておきたくなるような、
なにかあった時に開いてホッと安心したり、あたたかい気持ちになったり、励まされたり、いつでも“こども”を近くに感じられるような、
“こども”を考える手がかりになるような…
そんな本にしたい。

想いを込めて、またたくさんの方の協力を得てつくった一冊です。
どうぞ、お手にとってみてくださいね。

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