「自分たちで、暮らしをつくる。」ー ごかんのもり(神奈川県逗子市)
今回訪れたのは、神奈川県逗子市にある“NPO法人ごかんたいそう”が運営する保育園「ごかんのもり」。
太陽に照らされ美しく光る葉っぱ。秋の訪れを知らせる虫の声。自然の移り変わりを感じながら山道を登ると、そこにあるのはひと昔前の暮らしを思い出させてくれるような保育園、ごかんのもり。
「“原風景がうまれるきっかけとなる暮らしの場”をつくりたいんです。」
そう語ってくださった理由がわかるような空間、時間、暮らしが、そこにはありました。
ごかんの暮らし
「山道登ってくるの、結構大変だったでしょう?」
そう言って出迎えてくださったのは、今回お話を伺う全田 和也さん。
逗子の森の中に「ごかんのもり」を立ち上げ、9年。現在、代表理事をしながら、日々子どもたちと共に時間を過ごされています。
ごかんのもりに入るとまず目に入るのが、野菜や果樹が中心にある園庭。
自然と人が共生する「パーマカルチャー」の考えかたと暮らしを軸に、環境がつくられています。
この時期、庭で収穫できるのは、さつまいも、稲、ぶどうや無花果。訪れた前日には、炊きたてのごはんに採りたての紫蘇の実を混ぜて食べたのだそう。ああ、美味しそう。
この日も「これシソっていうんだけど、すごくいいにおいなんだよ。」と教えてくれる子や、遊びながらそれを口に含む子の姿が。
自分たちで育てているからこそ、知っていること、日常のなかに自然からいただくということが染みこんでいるんだなあと感じる瞬間が何度もありました。
園舎は、庭との境界線がなく、大きなデッキがあるのが特徴。この日はまだまだ暑さも残っていましたが、風が通り抜ける園舎はとても気持ち良さそうでした。
朝の集いは、みんなで丸くなって行います。
「明日のお月見で飾る“秋の実り”を探しにいかない?」と保育者が子どもたちに提案。
園舎や園庭と同じように、自分たちの生活の場のひとつになっている山の中まで、秋の実り探しに出発です。
「彼岸花って、毒があるんだよ。」
「シソに似てるんだけどトゲトゲがあるのはイラクサ。触ると痛いから気をつけてね。」
「この鳴き声は、ミツカドコオロギだね。あ、あっちはエンマコオロギだ。」
「ここに蜂の巣があるからね。静かに通るんだよ。」
自分たちの暮らしのそばにある自然について、子どもたちは本当によーく知っています。
山をくだり、最後は海の見える公園へ。
何も遊ぶ道具を持ってきていませんでしたが、自然物を使って遊びを作り出す。
おもむろに靴を脱ぐ子の姿に、どうするのかなと思っていると…
その中に花を飾っていました。
お腹がすいたね。そろそろ戻ろう。
園についたら、自分で食べられる分をよそい、準備ができた人からお昼ごはんをいただきます。
昼寝の時間までは、ぽかぽかで気持ちの良いデッキや庭で、子どもたちは思い思いに過ごしていました。
ごかんのこだわり
【パーマカルチャー】
自然と人が共生する「パーマカルチャー」の考えかたと暮らしを軸に、環境がつくられている。食育菜園はもちろんのこと、園庭にはコンポストがおかれ、そこでつくられた堆肥を畑で使うという循環がうまれている。
【食】
安全な農法の野菜を中心にした給食を日々手作りしている。庭で育てた野菜を、子どもたち自身がお味噌汁などに調理して食べることも。
【暦】
暦と寄り添う生活をしたいという想いから、週に一度「暦の活動」を。取材に訪れた翌日には、山に探しに行き集めた“秋の実り”を飾り、みたらし団子をいただいたそう。
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本当の豊かさってなんだろう?
自然のこと、人間の暮らしに目を向けて、改めてそんなことを考えずにはいられなかった「ごかんのもり」で過ごす時間。
ごかんのもりの子どもたちの暮らしの根底には、どんな想いが流れているのか。
じっくりとお話を伺ったインタビューは、後編でお届けします。
取材・文:三輪 ひかり
この記事の連載
「保育は風景をつくる仕事。保育者は原風景のひとつ。」日常を大切にする、ごかんのもりの在り方。
豊かな自然のなかで、手づくりされる自分たちの暮らし。
ごかんのもりの豊かな生活の秘訣はどこにあるのか、代表理事の全田 和也さんにお話を伺いました。