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プレイワーカー嶋村仁志さんと「遊びってなんだ?」を考える。

三輪ひかり
掲載日:2020/09/03
プレイワーカー嶋村仁志さんと「遊びってなんだ?」を考える。

私たちの日常のとても身近なところにある、遊び。
毎日、あなたの隣にいる子どもたちも遊んでいると思います。
でも、そもそも「遊び」ってなんだろう。
考えたことはありますか?

どこからどこまでが遊びで、その時の大人の役割ってなんだろう?

遊びにまつわる様々な疑問について、TOKYO PLAY代表理事を務めながら、冒険遊び場のプレイワーカーでもある嶋村仁志さんと共にたっぷりと考えてみることにしました。

「遊び」ってなんだ?

ー そもそも“子どもが遊ぶ”ってどういうことだろう?というところから、お話を始めたいなあと。

子どもって、「今から遊ぶよ」って遊び始めるわけじゃないし、「やりなさい」と大人に言われるから遊ぶわけでもないんだよね。その子自身の体や心が自然と動いてしまう。その瞬間から、その行為はその子にとっての“遊ぶ”になっているんだよね。

だからそう考えると、「遊びの機会をつくる」とか「子どもを遊ばせる」とかって、本当はちょっと変なんだよね。

嶋村仁志(しまむら・ひとし)

1968年8月6日生まれ、東京都出身。英国リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了。
1996年に羽根木プレーパークの常駐プレーリーダー職に就いて以降、プレイワーカーとして川崎市子ども夢パーク、プレーパークむさしのなど各地の冒険遊び場のスタッフを歴任。その後フリーランスとなり、国内外の冒険遊び場づくりをサポートしながら、研修や講演会をおこなう。
2010年、「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトにTOKYO PLAYを設立。2005年から2011年までIPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア・太平洋地域副代表を務め、現在はTOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事、大妻女子大学非常勤講師。


ー 園によっては「自由遊びの時間」という時間が設けられたりすることもありますよね。遊びってそもそも自由なはずだよね、と感じたことがありました。

そうだよね。遊びって、大人がきっかけをつくることももちろんあるんだけど、それの何を面白いと思っていて、どういうふうに展開したい…という答えは、どんな時もその子の中に全部あるんだよね。

以前、イギリスで受けたプレイワーク研修でも、「遊びは内側から生まれるもの」という話がありました。


ー 遊びは内側から生まれるもの、ですか。

特に、人間の子どもは未熟な状態で生まれてくるから、自分が有機物として生き残っていくために、外からの情報をちゃんと受け取っていかなければいけないという本能がそもそも備わっていて、その本能から外の世界を積極的に自分のなかに取り入れるんだって。それが、遊びなんだよね。

だから、子どもたちはいろんなことに挑戦する。高いところにのぼってみたり、よく知らないものを触ってみたり、水たまりでじゃぱじゃぱしてみたりする。

そういう何が起こるか分からない未知の世界と出会うことを、「怖い」と思うんじゃなくて「やってみたい」と思うメンタルが、人間には備わっているんだよね。


ー たしかに、息子が小さい頃のことを思い返してみると、まずはやってみるという姿が多くあったなと思います。でもその一方で、今5歳になるんですけど、覚えたことや分かることがだんだん増えてきていて、最近は初めてのことや失敗しそうなことに対して、怖さというか、やってみようかどうしようかといった葛藤も生まれているみたいだなと。

子どもにとって遊びって、自分と向き合う時間でもあるよね。やりたいことをやればいいわけだから、逆に、やりたくないことはやらなくてもいいわけなんだよ。つまり、自分の人生の“今”を誰かが決めるんじゃなくて、自分で決めていい時間だということ。

そう思うと、遊びって自分の内側を自分で育てていける、そういう大事な側面もあるんだよね。遊んでいると知らないうちに、自分の人生を自分で決めていくっていう気持ちや力を積み重ねていくんだよなぁ。


子どもは「自分がどう育ちたいか」を知っている

ー 子どもたちは、自分でやりたいことを決めて遊ぶ。その隣りにいる大人の役割ってなんなのでしょう?

大人には、子どもをどう育てたいか、どう育ってほしいかという気持ちが自然にあるとは思うんだけど、実は子どもは子どもなりに「自分がどう育ちたいか」を知っているんだよね。

その気持ちって遊びの中に出ていてさ、同じ遊びをしていても子どもによって「その遊びの何に夢中なのか」って違うんだよね。

たとえば、水たまりがあった時に、その水たまりの中にバシャっと入る子もいれば、眺める子もいるし、跳び越えようとジャンプする子もいるでしょう。それって、今その子がどう育ちたいのかが、遊びの世界に反映されているということだと思います。


ー  なるほどなぁ。保育士1年目の時とかって、子どもに対して何かアクションしなきゃ、何もしていないように見える子や同じことばかりやっている子を楽しませなくちゃ、と思っていたけど、子どもからしたらありがた迷惑だったよな…(苦笑)。

俺もそうだよ。最初のころはつまらなそうにしている子は積極的に声かけて、一緒に仲間に入れて楽しませなくちゃいけない、何か誘わなくちゃって思っていたんだよね。

ある時、冒険遊び場にきていた高校生に「何かしていなきゃいけないみたい」ってボソって言われて。「うわー、刺さる、それーーーー」ってなったこともあるよ(笑)。


ー 逆に、子どもだけで遊びが成り立っていると、それはそれで「ここで私は何を…役割をください…」みたいな気持ちにもなっちゃったりすることもあるんですよね。それで、うまくやるための助言とか手伝いを良かれと思ってやっていたけれども、それも今思うと、どうだったんだろうなあ。

自分が何かさせようとか、自分が自分がって思っている時間が多いほど、この子はなにしたいんだろう、どんな気持ちなんだろう、ということに心を寄せる時間が少なくなっていっちゃうよね。そうすると、「あれ、この子結局どうしたかったんだっけ」って、子どもの気持ちが全然見えてなかったってことが起きちゃう。

あとはさ、こっちから仕掛けようと思った時も、仕掛け方を工夫できるといいよね。これもイギリスの話なんだけど、冒険遊び場で小屋作りが流行ったらいいなと思った時に、「じゃあみんな、小屋作りするからー!」と声をかけるんじゃなくて、前日くらいから何気なくそこに柱を建てたり、材料を置いたりしておくんだっていうんだよね。そうすると、次の日、こっちから誘わなくても、「お、なんだこれは!」って心が動いた子どもたちが自分からつくっていくんだって。

こういう仕掛けって、全然子どもに響かないこともあるんだけど、でもそこから「この子、今こういうことに興味あるんだな、興味ないんだな」ということを発見することもできるよね。


大人は「土壌」だ。

だから、大人って「土壌」でいられるといいのかも。


ー 大人は土壌?

土って、その上に育つ植物に何も求めないでしょう。こっちに育っていきなさい、実をつけなさい、花をつけなさいとか何もない。その上で育つものが「こう育ちたい」と思っているのを、とにかく受け止めるんだよね。その土があるから、どんなに上に伸びていっても倒れずにいられる。大人もそうあれるといいなって。

知能を育てるため、体を育てるためって、大人が先回りして子どもが失敗しないようにとにかく準備しようとするのは、すでに豊かな土に堆肥をぶち込むようなことなんだよね。


ー すごくわかりやすい(笑)。肥料をあげすぎちゃうと、植物って逆に腐ったりしちゃいますもんね。

そう。大人が堆肥的な機能をうまく果たすことももちろんあるけど、土が豊かであれば、肥えていれば、本当は肥料っていらないぜって。

目的もありません。他人が決めたゴールもありません。あなたのやりたいと思ったことをまずはやってみてもOKなんだよって、受け止めてくれるものがあるから育っていく。最初の最初って、そこからじゃないですか?って思うな。



インタビュー:雨宮みなみ
文・構成/写真:三輪ひかり


この記事の連載

「遊びは自分自身を好きになれる、最初のスタート地点」ー プレイワーカー嶋村仁志さんの考える、遊びの大切さ

「遊びは自分自身を好きになれる、最初のスタート地点」ー プレイワーカー嶋村仁志さんの考える、遊びの大切さ

TOKYO PLAY代表理事を務めながら、冒険遊び場のプレイワーカーでもある嶋村仁志さんに、「遊び」についてお話を伺っている、今回のインタビュー。

前編では、そもそも子どもにとって遊びとはどういうものなのかをお聞きしました。
後編では、遊んでいる子どもの隣にいる大人の在り方から、さらにお話をじっくりと聞いていきます。



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