「遊びを中心とした生活を大切にしよう」ーあんず幼稚園(埼玉県入間市)
今回訪れたのは、埼玉県入間市にある“学校法人アプリコット学園”が運営する、「あんず幼稚園」。
子どもの「やりたい!」を刺激し、遊び込める豊かな環境。
「きのうのつづき」がうまれる生活の中には、保育者のみなさんの想いとたくさんの工夫がありました。
あんずの生活
「遠くまでわざわざありがとうございます」
そう言って出迎えてくださったのは、今回お話を伺う羽田 二郎さん。
30年近くあんず幼稚園に勤め、現在、園長先生をしていらっしゃいます。
羽田園長先生に案内してもらいながら園内を歩き、まず驚いたのは、まるで迷路のような園舎のつくり。
L字型に作られた保育室は、仕切りを外すと隣の保育室と繋げて広く使えたり、クラスで集まるときには空間を区切って狭くすることができるそう。
回廊デッキと呼ばれる廊下は、子どもたちにとって大事な遊び場。
「このデッキは、全ての部屋と園庭に繋がっているんです。年少組の子どもの中には、入園当初、このデッキをぐるぐる回るだけの一日を過ごす子もいるくらい、子どもたちにとってはたくさんの出会いと刺激がある場所なんですよね」と、羽田園長。
ここで人と出会い、自然を感じながら、遊び込んでいく。
実際取材に行ったこの日も、回廊デッキで過ごしている子どもたちの姿がたくさん見られ、あんず幼稚園の子どもたちにとって、回廊デッキは移動をするためだけのスペースではなく、立派な遊び場だということが伝わってきました。
タララッタラ タララッタラ タララッタララララン♫
部屋から海賊映画のテーマ音楽が聞こえてくると思い、のぞいて見ると…
そこにはたくさんの海賊たちが。
私たちがおじゃました9月中旬はちょうど運動会前で、海賊ごっこを運動会で行う年中組では、海賊ごっこからの海賊船づくりへと、子どもたちのなかで“遊び”が展開されていました。
「年長組は、トロフィーを巡って毎日リレーをしてるんです。子どもたちにとっては、運動会当日が本番というより、毎日が運動会で、毎日が本番なんですよね。当日は保護者の方々が見にくるという違いがあるだけで。」
その言葉通り、園庭には本気でリレーをする年長組と、それを応援する年少・中組の子どもたちの姿が。
(保育のなかで行事をどのように取り扱っているのか、後編で詳しくお聞きしています。)
レースが終わったあとは、勝ったクラスも負けたクラスも、どうしたら次は勝てるのか、どうしたらもっと速く走れるのかを作戦会議。
こんな子どもの姿が運動会が終わっても、あんず幼稚園では続いていくのだそう。
あんずのこだわり・工夫
【5つの庭】
ひよこの庭、もみじの庭、電車の庭、ほしの庭、いちょうの庭の5つの庭がある。
ひよこの庭、もみじの庭、電車の庭には、常駐の保育者がいるので、担任の保育者は子どもたちを安心して庭に送り出すことができ、子どもたちも行きたい庭にいつでも遊びに行くことができる。
【プライベートデッキ】
回廊デッキは、誰もがどこでも自由に使え、また通路でもあるので、年少組の子どもたちにとっては落ち着いて遊びこめないという面もあると考え、年少組の保育室には、専用のデッキを設置。
庭の遊びを感じることができるという意図もあり、他者を感じながらも、区切られた小さめの空間で、気の合う仲間たちとじっくりと遊び込むことができる。
【楽しいトイレ】
毎日最低1回は必ず利用するトイレを、保育のなかで大事な場所であると考え、思わず行きたくなるような明るくて、開放的な空間になるように設計。
大きな水槽には金魚が泳ぎ、壁にはたくさんのビー玉が。
【回廊デッキに置かれた身体を使う遊具】
個別の運動技能を習得する前に、生活や遊びのなかで身体を思う存分に動かし、伸びやかに運動能力を発達させることができるように、回廊デッキには鉄棒やはしごなど、様々な身体を使う遊具が置かれている。
【汗拭きタオル】
ポケットに入れていると落ちてしまうし、タオル掛けがある場所までわざわざ行くのは遊びを中断させてしまう。そんな課題を解決したのが、汗拭きタオル。
子どもたちはいつでも、どこにいても、汚れたり濡れたりした手や顔をサッと拭くことができる(基本は汗を拭くもの)。
*
自由に遊びまわり、そして遊び込む子どもたちの姿。
一つひとつ意図をもって作られた、環境。
あんず幼稚園の保育はどんな想いから成り立っているのでしょうか。
じっくりとお話を伺ったインタビューは、後編でお届けします。
取材・文:三輪 ひかり
写真:雨宮 みなみ
後編: 「保育者だって、謝ってやり直せばいい」あんず幼稚園の考える、保育者の役割と在り方
一つひとつ意図をもって作られた、環境。
あんず幼稚園の保育はどんな想いから成り立っているのか、園長の羽田 二郎さんにお話を伺いました。