わたしが“ほいくる”を作った理由
たった1つの白黒のあそび記事から動き始めました。
保育の世界は独特。
知識や経験があればあるほど、それだけ広い選択や世界のなかで保育ができるのに、なかなかそれが難しい。
ほいくるを始める前、保育士として保育園で子どもに携わっていた私は、自分の視野を広げて引出しを増やしていきたいと焦る一方、日々の忙しさのなかで、いつしか「こなす」ための情報収集をしそうになっている自分に違和感を感じていました。
ほいくるの立ち上げは、そんな状況に踏み込む、ちょっと大きな1歩となりました。
「せんせい、そんなにがんばらなくてもいいんだからね。」
保育士をしていた6年の経験は、わたしにとって大きな出来事の連続でした。
なかでも、今のほいくるにもつながっている出来事が起きたのは、保育士1年目の、ちょうど終わり頃のこと。
初めての保育、子どもと向き合い続け神経と体力を駆使する毎日のなかで肩に力が入り、目の前の“進級に向けてやらなきゃいけないこと”に必死にもがいていたわたしに、ある女の子が言ったのです。
「せんせい、そんなにひとりでがんばらなくてもいいんだからね」。
きっとその子は、特に深い意味で言った訳ではなかったと思います。
でもその一言はまさに、いつの間にか子どもの姿からピントがズレてしまったことに気づかないまま、変なところに力が入っていた私を客観的に捉えたものでした。
当の子どもたちをおいてけぼりにして、何をそんなに頑張っているのだとハッとさせられたこの経験は、「ほいくるを訪れた人が、おもわず子どもの姿を想い浮かべられるようなサイトで在りたい」という、今のほいくるのコンセプトへと、大きく繋がっています。
「この遊び、子どもたちよろこぶだろうな〜」
「あの子たちだったら、どんな風に楽しむだろう」
と、忙しい中でも子どもの姿を一瞬でも思い浮かべて、おもわずニンマリしてしまう。
その一瞬が、子どもたちの保育園で過ごす時間をより豊かにするきっかけになるかもしれない。
今、限られた環境のなかでさまざまなことが求められる、課題の多い大変な保育環境下でも、子どもをおいてけぼりにすることなく、子どもの姿に寄り添った環境が保たれるだろうなぁと思ったのです。
「あなたにとって、保育とはなんですか?」
わたしが保育をしていた頃から、保育の現場も社会も大きく変化しました。
保育現場へのニーズはさらに高まったように思うし、それに伴って、保育のカタチもどんどん多様化しています。
ほいくるサイトへは、以前にも増して「答え」を求めにくる人が増えました。
保育士一人が抱える負担もまた、増え続けているのかもしれません。
でも、そんな時だからこそ、人生の土台ともいえる乳幼児期の子どもたちと長時間過ごす保育士が、「大変さ」ではなくて、「誇り」を語れるようになったら、どんなに子どもたちにとって心強い存在だろうと思うのです。
ほいくるではこれまでに、30園以上の保育園に取材に行ってきました。
その中で欠かさずしてきた質問があります。
それは、「あなたにとって、保育とはなんですか?」という質問。
答えがないからこそ、みんなが日々「保育」というものをどう捉え、向き合い、大切にしているのかが知りたくて質問してきたのですが、面白いことに、ひとりとして同じ答えをする人はいませんでした。
「小学1年生になった時に困らないように…ということで、保育ってするわけじゃない。
そうじゃなくて、その子が人として生きていくために、ここがあるんです。
この先子どもたちが生きていく上で必要となる力の基礎を身につけられる場であり、時間でありたい」
(シンフォニア保育園 杉山園長先生)
「その子が豊かな人生を送れるように、そして最後にちゃんと「いい人生だったな」と思えるように心や身体の土台を培う人育て」
(しあわせな木保育園 高倉先生)
「その子が豊かな人生を送れるように、そして最後にちゃんと「いい人生だったな」と思えるように心や身体の土台を培う人育て」
(しあわせな木保育園 高倉先生)
答えがないからこそ、じっくり、丁寧に、子どもたちに向き合う。
こんなに、一人一人の、今だけでなく“人生”に向き合ってくれる人たちと出会える子どもたちは、どんなに幸せだろうと思うと同時に、保育者って、なんて尊い職業なんだろうと、心底思います。
この、子どもたちへの溢れる思いに専門性が重なったその先に、本来認められるべき価値があるのではないでしょうか。
ほいくるが考える、「保育」とは
もしも、わたしたちほいくるが、「あなたにとって、保育とはなんですか?」と聞かれたら。
字のままに、「育ちを保つもの」と答えます。
おもしろおかしくて、デタラメで、でもどこか本質をついていて、たくさんの可能性と多様性に溢れている子どもの世界。
そんな子どもの世界や育ちを邪魔せず、時におもしろがり学び合いながら寄り添っていくために。
これからもほいくるは、“うまくやるための大人の助言”の代わりに、子どもの”やってみたいが溢れる環境”を作るきっかけを提案し続けたい。そんな想いを込めて、さまざまな場所や時間、人や視点、考え方に触れながら、これからも、子どもと関わる時間が、より豊かになる何かに出会える場でありたいなと思っています。