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「さよならぼくたちのほいくえん」を生み出した新沢さんの考える、新しい「卒園ソング」の選び方<後編>

三輪ひかり
「さよならぼくたちのほいくえん」を生み出した新沢さんの考える、新しい「卒園ソング」の選び方<後編>

多くの保育園や幼稚園で歌われ続ける楽曲を生み出している、シングソングライター新沢としひこさん。

前編では、保育と音楽で大切にしてほしいことや保育者の役割についてお話いただきました。後編では、「卒園ソング」にスポットをあて、さらにたっぷりとお話を伺います!


歌も保育も「子ども性」が大切


新沢さんは今までたくさんの曲を作詞・作曲されているかと思いますが、その中でも卒園ソングをたくさん作られているイメージがあって。

たしかに、卒園ソングもたくさん作ってきましたね。雨宮さんも保育士をしていた頃、卒園ソングって歌っていましたか?

はい。わたしは年長児を担任することも多く、毎年のように歌っていました。
特に「一年生マーチ」がすごい好きで。「♪みんな待っている」の歌詞の部分で、子どもたちの「はいはいはい」という謎の合いの手が入ったりして(笑)。すごく盛り上がって歌っていました。


それは、面白いですね!

はい、わたしの中でとても思い出深い曲のひとつになっています。
今回新沢さんと対談させていただくにあたり、改めて新沢さんの作品の歌詞を読んでみたんですけど、どの曲も子どもの気持ちをまっすぐ歌っているのが印象的だなぁと。
実際歌を作られる時って、どのような思いを込めて作られているんですか?

よく、「新沢さんは子どもの仕事をしていたから、こういう詩を書くんですか?」と言われたりするんだけど、自分では「あ、そうなんです」と、簡単には言えない感じがするんだよね。
僕は、子どもの歌を作る時、自分の中の“子ども性”、つまり自分の中の子どもが作るということを大事にしていて。

“子ども性”ですか。

はい。それは、子どもはこういう言葉を書いたら喜ぶだろうとか、こういう風に考えさせたいみたいな大人の上からの押し付けではなく、子どもの視点に降りて、自分の中の子どもが歌わなくちゃいけない。
この自分の中の子ども性がちゃんと発揮されて作られた言葉だったら、絶対子どもたちに届くと信じています。

うーん、面白いですね!
うちの会社では、「ほいくる」という遊びの情報サイトを運営しているんですけど、それこそ遊びって「こうしましょう」という答えがないじゃないですか。
なので、大人よがりなものになってしまっては意味がなくて、新沢さんのおっしゃっていた“子ども性”が本当に大切だと思っています。

そのために、子どもと触れ合う機会というか、何をやってもいいよっていう場を作って、そこに参加した子どもたちから学ぶ「コドモガラクタラボ」というのをやっているんですけど、そこで遊んでいると、いつの間にか子どもより大人の方が夢中になって遊んでいることが多いんですよね(笑)。
大人はみんな子どもを経験しているので、なんかこう子どもの頃がよみがえって…その瞬間って、子どもたちとの距離が、ぐっと近くなるのを感じます。

コドモガラクタラボの様子

その通り!
あとね、実はその“子ども性”を発揮するコツみたいなものもあるなと思っていて。
子どもは、本能的で感覚的、その反面大人は、理屈的で左脳でものを考えがち。だから、“子ども性”を引き出したいと思う時、身体的にそのものに関わるってことがすごく大事だなと。例えば、歌を作ることで言うと、体を使って書くと子どもに近くなったりするんです。

あぁ、なんか分かる気がします。これは保育の仕事でもいえることですよね。


うんうん。「一年生マーチ」だったら、「♪ランララララン」というフレーズを譜面上で作るのではなく、ランラララランって、こう「ラ」って音がさ、どんどん広がっているのを身体で表現しながら作るんだよね。

言葉が大事なんじゃなくて、その感覚がとても大事。それがないと、ただの標語みたいになっちゃう。


大人気!「さよならぼくたちのようちえん」の制作秘話


一年生マーチとはまた違う、卒園らしい胸がぎゅっとなるような切ない気持ちにさせてくれる、「さよならぼくたちのほいくえん」。
特に新沢さんの作られた卒園ソングの中でも歌われているイメージがありますが、この歌が生まれた背景や、秘話みたいなのってありますか?

「さよならぼくたちのようちえん」は元々、ある保育雑誌の当時の編集長さんから、「卒園の歌を作りたい」と依頼があったんです。
ちょうど僕、その頃に一番最初に勤めていた保育園を辞めて、次の園に異動したばかりだったから、自分の中でも、保育園に対する気持ちの集大成みたいなところがありました。

それで「よし、卒園の歌を作るぞ」となった時に、卒園式ってなんで親御さんがあんなに泣くのかなって、改めて考えたんです。そしたらさ、それは保育園っていうのは親も毎日通う場所だからだ、と思って。


「私は仕事に行くから、あなたここで1日頑張るのよ」、「先生お願いね」って、子どもを預けて行くわけじゃない。卒園するまでの6年間、毎日毎日。
だから卒園式は子どもだけではなくて、そんな親御さんにとっても、今までの生活もおしまいなんだねという気持ちになって、胸がいっぱいになる瞬間なんだと思ったんです。

そうかもしれないですね。

だから、子どもがこの曲を「♪たくさんの毎日をここで過ごしてきたね、どこで走って、どこで…」と歌う時、親御さんや先生は、「ああ、園庭のあそこを走ってた」、「あそこで転んで、あそこでケンカしてたな」とかさ。もう、そういう思い出をいっぱい思い出して、でもそれももうおしまいなんだ!って。…話していて、涙出てきそうになるけどさ。

なんか、そういうことが、「卒園式」って僕は思っていて。だから、子どもが、「何度笑って、何度泣いて、何度風邪をひいて…」と無邪気に歌うんだけど、「そうよ、あんたは何度も風邪ひいたのよ!」っていうようなことを、自分の思いとしてすごく書いています。
間違いなく、僕の中での思い出の歌のひとつですね。

まさに「ああ、この子ここで遊ぶの好きだったな」って、思い出しながら歌っていました。でもそうすると、先生たちはもう歌うどころじゃなくなっちゃうんですよね。


子どもの姿を思い浮かべて、選んでほしい


新沢さんの中で、この卒園ソングがおすすめというものはありますか?

この歌というものはないんですが、ぜひ先生たちには子どもの姿を思い浮かべながら、選曲してほしいですね。
「もうすぐりっぱな1年生」という歌を作ったことがあるんですけど。

これは、ワガママで、いたずらっこ、ふざけるのが大好きだし、ケガはする、風邪はひくという子どもたちが成長して、もうすぐ立派な一年生だよっていう歌なんです(笑)。

一見、「卒園式に向かないんじゃない?」と思うかもしれないけど、これはね、卒園の歌ってバラードとか、ちょっと切ない歌とかが多いんだけど、そういう歌があんまり似合わない子もいるよなぁと思って作ったんだよね。

そしたら、保育士さんが、「今年の子が、まさにこういう子たちなんです!」って言うんですよ。
「今年はこれ歌いたいんです!去年は違う曲を歌ったけど、今年の子だから歌いたいと思うんです」って言われたりすると、すごく嬉しいなあって思います。
今自分の目の前にいる子どもたちに合った曲を選んでくれたら、僕は幸せです。

なるほど。
いろいろな思いが込められた卒園ソング、今年はどんな形で、どんな笑顔や涙と共に歌われるのか、楽しみですね。




新沢としひこ


新沢としひこ:シンガーソングライター(所属:アスク・ミュージック)・元保育士
1963年生まれ。
東京の保育所で保育者を経験した後、シンガーソングライターになり、数多くのCDや楽譜集を発表。
代表作『世界中のこどもたちが』は、小学校の教科書に採用され、カバーも多数。
現在は、ソロコンサートやジョイントコンサート、保育講習会の講師として活躍するかたわら、CD制作のほか児童文学の執筆や絵本を出版するなどマルチに才能を発揮している。


雨宮みなみ


雨宮みなみ(あめみやみなみ):こども法人キッズカラー代表
1986年生まれ。
和泉短期大学児童福祉学科を卒業後、保育士として6年間子どもたちと携わった後2010年起業。自身の保育士経験を軸に、「あったらいいな」を形にHoiClue♪の立ち上げを行う。
2014年に第一子を出産し、一児の母でもある。

(執筆・撮影:三輪ひかり)


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