保育と遊びのプラットフォーム[ほいくる]by 小学館

「一人ひとりの異なりを大切にする。」_ カミヤト凸凹保育園 (神奈川県厚木市)

三輪ひかり
掲載日:2026/10/09
「一人ひとりの異なりを大切にする。」_ カミヤト凸凹保育園 (神奈川県厚木市)
今回訪れたのは、神奈川県厚木市にある、社会福祉法人愛川舜寿会が運営するカミヤト凸凹保育園。

園内には、0〜6歳の児童発達支援と就学後7〜18歳の放課後等デイサービスを行う、障害児通所施設「カミヤト凸凹文化教室」も併設され、年齢や発達の違いにかかわらず、子どもたちがともに過ごす、インクルーシブな保育を実践している園です。
そんなカミヤト凸凹保育園で、子どもたちはどんな毎日を過ごしているのでしょうか。
前編では、園の様子を写真とともにたっぷりお届けします。

「暑い中、よく来てくださいましたね。」
そう言って出迎えてくださったのは、園長の瀬山さと子さん。

園長の瀬山さと子さん

園内に入ると、まず目に入るのが、全周約100メートルのロの字型の半屋外回廊です。

子どもたちは、この回廊をぐるぐると行き交いながら、自然と異なる年齢の子どもや、障害のある・なしを越えて出会い、ときには一緒に過ごします。

回廊の周囲や内側には庭やさまざまな居場所が設けられています。誰かと一緒に過ごすことも、少し離れてひとりで過ごすこともできる。人の気配を感じながらも、それぞれが自分にとって心地よい距離を選べるように、空間がつくられていました。

回廊の内側には、芝生と土庭、アトリエと呼ばれる舞台がある。
回廊の外側にある砂場。

子どもたちが行き交う動線そのものが、自然な出会いを生み、異なる年齢や背景をもつ子どもたちが穏やかに混ざり合う。園舎のつくりそのものが、そんな子どもたちの日常を支えているように感じました。

また、保育園と同じ園舎内には、障害児通所支援事業「カミヤト凸凹文化教室」が併設されています。この日は、そこに通う中学生が0歳児の部屋で一緒に過ごしていたり、反対に、幼児の子どもたちが「カミヤト凸凹文化教室」に遊びに行っていたり。

見学に訪れた私たちには、誰がどのクラスの子なのか、どこに通っている子なのか、わからなくなるほど、年齢も、障害のある・なしも、所属する場所も関係なく、子どもたちがごちゃ混ぜになって過ごしている姿が印象的でした。

0歳児クラスの部屋
カミヤト凸凹文化教室の部屋

「朝から帰りまで、子どもたちは自由です。自分の好きな場所で好きなように遊び、お昼ご飯も、どこで、誰と食べてもいい。どこで、どう過ごすのか。その決定権は、子ども自身にあります。」と瀬山さん。

その言葉通り、この日も、園庭で水遊びをする子がいれば、保育室から椅子を持ってきて、回廊で本を読む子もいる。保育室の中で、じっくりと工作を楽しんでいる子もいました。

さらに、同じ法人が運営する就労継続支援B型事業所の利用者さんが、定期的に園舎内の掃除に来てくれ、子どもたちとも関わってくれています。

園の内外を行き来する、さまざまな人たち。子どもたちは日常のなかで、年齢も、立場も、得意なことも違う、いろいろな「凸凹」と出会いながら過ごしています。

誰かを「特別な存在」としてではなく、いろいろな人がいることを当たり前のこととして受け入れながら暮らす。カミヤト凸凹保育園には、そんな日常がありました。

カミヤト凸凹の暮らし

子どもたちのスペース「お支度室」

「生活」と「遊び」の空間を完全に切り分けた、子どもたちの生活の場。幼児クラスの子どもたち一人ひとりのロッカーがあり、自分で身支度をするスペースとしている。ここは子どもたちの場なので、大人はズカズカと入っていかない。

本物であるということ

給食で使用する食器は、波佐見焼の陶器の器を使っている。危ないからプラスチックの器
にするのではなく、落としたら割れてしまうということを体験することも大切と考えている。

地域とのつながりの中で暮らす

地元の建設会社「オオツカケンセツ」が無償でオリジナルの家具を製作してくれたり、地域の方から「柿が取れたから取りにおいで」「花を摘みにおいで」と声をかけてもらったり、日常の中で同じ地域で暮らす人とのつながりがある。子どもたちがよく行く広々とした田んぼや畑も地域の方々が無償で貸してくれたり、近所の養豚農家さんは子豚が生まれると教えてくれて見せてくれる。

保育者の「こんなものが欲しい!」を形にしてくれるのだそう。

園の門も、あえて外から園内の様子が見えるつくりにしている。背景にあるのは、「一人の不審者のために、99人とのつながりをシャットアウトしたらもったいない」という考え方。
園の立地にもその思いは表れており、園を建てる際、いくつかの候補地のなかから選ばれたのは、厚木市内で最も高齢化率の高い地域。

おじいちゃん、おばあちゃんが暮らすまちに子どもたちの声が響く。子どもたちが地域の人と出会い、地域の人たちもまた子どもたちの成長を見守る。園の中だけで完結するのではなく、地域の暮らしのなかに子どもたちがいることを大切にしている。

道ゆく人とタッチができるよう、格子の幅も広くしている。

撮影:雨宮みなみ
写真の一部ご提供:カミヤト凸凹保育園

この記事の連載

カミヤト凸凹保育園・園長瀬山さんに聞く、子どもの「やりたい」が真ん中にある保育

今回訪れたのは、神奈川県厚木市にある社会福祉法人愛川舜寿会が運営する、カミヤト凸凹保育園。保育所、児童発達支援、放課後等デイサービスなどを行う拠点です。

後編では、園長の瀬山さと子さんに、カミヤト凸凹保育園が大切にしていることや、日々の保育で考えていることについて、じっくりとお話を伺いました。