すべてのこどもを支えるために、職種や立場の違いを超えて、どうつながるか
多職種による「はじめの100か月の育ちビジョン」推進のための懇談会レポート
〜「こどもの育ちを支える環境や社会の厚み」を増すために必要なこと〜

こどもの誕生前から小学校1年生までの「はじめの100か月」は、こどもの育ちにとって特に大切な時期です。こども家庭庁が推進する「はじめの100か月の育ちビジョン」では、この「はじめの100か月」を社会全体で支えていくために、「こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す」ことの重要性が示されています。
▶こども家庭庁公式ページより「はじめの100か月の育ちビジョン」について
令和8年2月に実施された「多職種による『はじめの100か月の育ちビジョン』推進のための懇談会」では、全国各地から、幼児教育・保育施設、子育て支援施設、社会福祉協議会の職員、医療関係者、民生委員・児童委員など全国11団体から、さまざまな立場でこどもの育ちを支える実践者17名が集まりました。職務や立場、地域の違いを超えて、社会全体でこどもの育ちを支えるためのヒントについて話し合いました。

懇談会の集合写真。全国から11団体合計17名と事業運営委員4名が参加。

オンラインで参加したみなさん。
グループディスカッションにおける実践事例の共有
幼児教育・保育施設の立場として懇談会に参加した「社会福祉法人栄寿会わかな保育園」からは、地域に開かれた公開保育のイベント「夢見る保育デー」をきっかけに、農業や林業などさまざまな地域住民とつながりが生まれ、園の環境づくりや保育にかかわる人が増えていった事例が紹介されました。

社会福祉法人栄寿会わかな保育園(茨城・水戸市)
まずは保育園の暮らしを地域の人に見てもらい、知ってもらうことから始めようと考えて「夢見る保育デー」という名の一般公開イベントを始めました。この取り組みをきっかけに、茨城JA中央会やJA水戸有機農業研究会、日本農業実践学園と出会い、こどもに安心して食べさせられる「お米を作りたい」という言葉を受けて、約2反の田んぼや技術を無償提供いただきました。
その田んぼでは、年長児と保育者、保護者でしろかきや田植え、稲刈りをしたり、園庭の森化促進のため、茨城県林業関係者や技術者が植栽や土づくりを手伝ってくれたりと、いろいろな業種の方が得意なことを園に還元してくれています。保育士以外にも、こどもの育つ環境をよりよいものにしていこうと思ってくれる人がいるのは心強いです。
このほか、幼児教育・保育施設からは
- こどもの興味や気づきを出発点とした探究型の保育を通して、地域とのかかわりを育んでいる取り組み
- 園内に65歳以上の地域住民が通う高齢者クラスをつくり、こどもたちと高齢者世代が同じ空間で生活をともにする取り組み
などが共有され、ほかの参加者からも注目を集めました。
職務の違いを超え、共通の課題について話し合う
今回の懇談会では「こどもの育ちを支える」ための共通の課題についても議論が交わされました。グループディスカッションや、その後の全体議論の中で出てきた意見をご紹介します。

集まりに来られない人にどうアプローチする? そのとき、立場の違いを超えたつながりがどう役に立つ?
諸富地区社会福祉協議会 もろどみ広場(佐賀・佐賀市)
私たちは子育て広場を運営している団体ですが、来てくれるのを待つだけではなく、子育て支援の「ホームスタート」と連携して各家庭にアプローチするようにしています。保健師さんと一緒に家庭へ出向き「ひろばに行きたくなったら、私たちも一緒について行くからね」と声をかけています。
ほかにも、保健師や助産師、広場スタッフの力を借りて案内したり、産婦人科にもチラシを置いてもらったりしています。最初の一歩を踏み出すときの丁寧な寄り添い、さまざまな専門職からの紹介が、信頼して利用できる安心感につながっていると思います。
豊中市民生・児童委員協議会 第1地区主任児童委員連絡会(大阪・豊中市)
私たち豊中市の主任児童委員も、自治体の赤ちゃん訪問事業にかかわっています。保健師さんや助産師さんによるフォローも大事ですが、地域に住む私たちが、子育てサロンに「ぜひ来てくださいね、顔が見える形で私たちが待っていますよ」とお話しすることで、保護者の方が足を運びやすくなっていると思います。
どのように地域とつながっていけばよいか?
参加者からは、職務や専門性は違ったとしても、同じ「こどもの育ちを支える」実践者として、どの職種にも応用することができるさまざまなアイデアが出されました。
- とにかくいろいろな集まりに顔を出して、顔の見える関係性を築くことを大切にしています。市役所に足を運び、自治体のキーパーソンであっても直接対話するようにしています。(子育て支援施設 職員)
- 最初に企画を市に持っていったときは断られてしまいましたが、何回もトライして「地域の人に保育を見てほしい」と訴え続けました。結果的に、市と社会福祉協議会が後援をしてくださり、チラシ配りにも協力していただきました。(幼児教育・保育施設 職員)
- 声をかけてみると、意外と相手の方も同じ関心や課題を持っているとわかることがあります。高校と社会福祉協議会との連携はそのようにして実現しました。(社会福祉協議会 職員)
- 制度に合わせようとすると、やることが目的になってしまう。制度はあとからついてくるものと思ったほうがいいかもしれません。(幼児教育・保育施設 職員)
つながりは、待つのではなく自らつくりに行く
ほかの専門職や地域などとのつながりは、自然に生まれるのを待つのではなく、自ら働きかけて育てていくことが大切です。懇談会の参加者からも、さまざまな専門性や地域とのつながりが、今後の活動に重要であることを再認識したとの声がありました。

懇談会参加者からの声
- 「つながりたいと思ったらつながりに行く。そういった思いのある仲間がたくさんいることを心強く思いました。」(幼児教育・保育施設 職員)
- 「他職種、多職種とのつながりがこれからの活動に大事だと気づかせていただきました」(民生委員・児童委員)
- 「どう地域との関係をつくっていくのか知りたい。このような全国での交流の機会が、定期的にあるとよいと思いました」(医療関係者)
すべてのこどもに届けるために
「はじめの100か月の育ちビジョンの中で一番大事なのは、すべてのこどもに届くということなんですよね。すべてのこどもにリーチするには、すべての大人がかかわらないと届かない。だから地域の人たちを巻き込むくしかけを作っていくのも、こどもにかかわる専門職などに期待されていることで、それを今日みんなで議論ができてよかったです」
本事業運営委員の新澤拓治さん(社会福祉法人雲柱社 練馬区立地域子ども家庭支援センター光が丘 所長)の上記の発言にあったとおり、この懇談会を経て、参加者それぞれが、保育・福祉・医療・地域支援など、異なる立場の人がつながることの重要性を改めて感じる時間になりました。
ひとつの機関だけでは解決できない課題も、多様な専門性と地域の力が重なり合うことで、乗り越えることができる。こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増すために、このような取り組みが全国各地に広がっていくことを期待します。
この記事で紹介した実践事例についての詳細は、こちらからご覧いただけます。