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しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ(第四回)「私の現場」

齋藤美和(さいとうみわ)
掲載日:2025/07/08
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ(第四回)「私の現場」


このところ、会議や委員会が多く、なかなかどっしりと園にいられない日々が続いた。園にいられない不安と、自分の仕事の手際、勘の悪さがのしかかる瞬間が重なり、深呼吸なのかため息なのかわからないものが出てしまう。いつの間にか吹き出物と、口内炎が出来ていて、トホホとなる。それでも、こういった会議が運営や福祉を支えている側面もあるし、役員会もとても大切な仕事でもある。

「事件は会議室で起きてるんじゃない」という映画のセリフがあったけれど、保育はどこで起きているんだろう。立ち止まって考えてみると、さまざまな「現場」が保育園の中にはあるような気がする。

現場の声とか、現場からの意見とか、現場という言葉の中で、何が私の「現場」なのかなと思うところがある。子どもと一緒にいるのは「保育現場」。この「保育現場」からしかわからないこともあるし、見えてこないものもある。「事務現場」なんて言葉は聞いたことがないけれど、事務も労務も用務もキッチンもどれもかけがえのない「現場」だ。

だからこそ、それぞれの「現場」に違いや興味を持ったり、知ったり、理解しようとする姿勢が大事だし、私自身も真剣に知りたいと思う。だけど、その中で見落としたくないことは「それは今、子どもを中心に考えているか?」ということだ。

会議中、いろいろと議題や課題が練られていく中で判断に迷った時、「それって子ども中心に考えているかな?」と立ち返る言葉になっている。気持ちがぐらぐらする時ほど、立ち返ることができる、この言葉の奥行きを感じる。


7月。水遊びが本格的に始まる。まぶしい光、吹いてくる風、美味しいごはん、冷たい水。内側に入って子どもと一緒に「今、この時」を共に感じられる私でいたい。自分の心の手綱をしっかり持って、私の現場をさぼらずに。


ー このコラムは『しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ』の連載第四回です。

このコラムの連載

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この祭典は、2歳児〜幼児グループが日頃行っているまち歩きを保護者の方と分かち合う日。子どもの視点や発見に耳を傾け、視線を合わせて、子どもに導かれて、この地を一緒に歩く。

パンフレットに以下の言葉を書いた。