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身近な自然物は、子どもたちにとってどんな存在なんだろう?〜HoiClue Lab.あそび探究室セッションレポート#01〜

雨宮みなみ
掲載日:2025/05/26
身近な自然物は、子どもたちにとってどんな存在なんだろう?〜HoiClue Lab.あそび探究室セッションレポート#01〜

HoiClueで運営している「HoiClue Lab.あそび探究室」
Labメンバーさんとのセッションの時間が、毎回発見や気付きにつながることばかりなので・・・3期目となる今年度より、その中身を月1回、みなさんにもほんの一部だけお届けしていきたいと思います。

今回紹介するのは、2025年5月のセッションより「あそび ✕ しぜん」をテーマにした話のなかで出てきたエピソードたちです。

あそび探究室のLabメンバー

保育園、こども園、幼稚園、発達支援施設、児童館、園の外部講師など、さまざまな場で子どもたちと関わっているLabメンバー。経験年数やバックグラウンド、お住まいの地域も全国各地それぞれです。
今年度は11名で活動しています。

はじめまして。ツマグロヒョウモンチョウの幼虫

黒くて、オレンジ色の線や点々があって、ケバケバしていて、ちょっとぎょっとするような見た目のツマグロヒョウモンチョウの幼虫。パンジーの花を食べるので、春になるとパンジーを植えている場所に集まってくる。

年少さんの担任をしていたときのこと。はじめての園生活、そして虫が苦手な子が多いなか・・・このツマグロヒョウモンチョウの幼虫が、テラスを行き来している姿が。「うわあ!」と子どもたちはちょっとしたパニックに。実は保育者の自分自身も虫は苦手だけれど、意を決して手にのせて子どもたちと一緒に見てみる。

「大丈夫だよ、赤ちゃんなんだよ。」と話しながら眺めているうちに、恐る恐る手にのせてみる子、その姿を見て横から触り「かわいい」と言う子が出てくる。どういう気持ちだったのかは分からないけれど、一歩踏み込んでみたことで、子どもたちの“はじめての出会いから触れ合い、繋がった瞬間”に出会うことができた。そこからだんだん他の子どもたちも興味を示していって、もちろん全然触らない子もいたけれど、その出会いの瞬間に立ち会えた喜びというのを、赤ちゃんとはまた違う年少さんで感じられたことに、なんだかすごく感動した。

(ちなみに、サナギの時にはキラキラした光るボタンみたいなものをつけているような、とてもきれいな姿になる。サナギからちょうちょになりやすいので、その変態の姿をみんなで観察するのもおもしろい。)

※調べて出てきた、ツマグロヒョウモンチョウについての情報を併せてご紹介します。
資料:「たのしい生きもの観察」

朝の訪問者、サワガニ・・・!

2歳児の担任をしていたときのこと。子どもたちが「クモだ!」と騒いでいるので見てみると、そこには大きめのサワガニが・・・!まさかこんなところにカニがいるなんて思わなかったので、みんなでびっくり。

クラスの購入費で買わせてもらっていた虫かごに入れてみると自然とみんなが集まってきたり、餌は何々がいいよと2歳児なりに話している姿があったり。生きものがいるだけで子どもたちが繋がるというか、この年齢でもそんな雰囲気が生まれるんだなあと感じた。(ちなみに、子どもたちの話に出ていた餌の案は、そこら変に落ちている葉っぱだった!)

振り返ってみると、クラスに当てられた購入費で買った物のなかで、100円だった虫かごが一番充実して使えた。

雨上がりの散歩で出会う、カタツムリ

雨上がりにたくさん出てきたカタツムリを見て、子どもたちにも見せることに。
1歳児なのではじめてカタツムリに出会う子もいて、なんのこっちゃ分からない子ももちろんいたけれど、雨上がりにしかなかなか見ることができないからこそ、そのタイミングで散歩に行くかどうかだなあと思った。

仲良くなれる、ツールの1つ

子どもが泣いているときにタンポポの綿毛をフーっと吹いたらふわっとして、それだけで気持ちを落ち着かせてくれたり、葉っぱに穴をあけてお面にするだけで笑ってくれたり、ありの巣穴をのぞいてみることで“いっしょに”何かをする経験ができたり、水たまりが「ビチャビチャドロドロ」のさいしょの一歩になってくれたり、虫を獲ってあげると「こいつやるなあ」とヒーローみたいに思ってもらえたり。

植物にも、虫や虫の赤ちゃんにも、鳥にも、本当に自然にはお世話になりっぱなし。
楽しいとか、おもしろいとか、興味があるというのは、子どもたちにはとても大きなことだと思うから、そういう意味でもすごくありがたい存在でもあり、子どもと仲良くなれるツールの1つのように感じている。

水の移動

3歳児で絵の具を楽しんだ時のこと。
いろいろと遊んだ末に机の上がビチャビチャになっていって水溜り状態に。水が床に落ちる前に何とかしたいなあと、ティッシュを浸して絞って容器に入れると、それを見ていた子がその動作にハマり・・・ティッシュなんかじゃやってらんない!と雑巾を持ち出して、浸して吸い取って絞ってを繰り返し、机の上を綺麗にピカピカにしてしまった。

その姿がとても真剣で、染みこませて絞ると水は移動できるとか、水の性質とか、なんだかもう自然の摂理を体めいっぱい通して学んでいるようだった。やっぱり、興味を持ったことを遊びながら勝手に学んでいる、というこれって子どもの自然な姿だよね、と他の先生たちと話しながら眺めていた。
子どもたちは価値観や常識などで動いていないから、もう子ども自身が自然というか、やっぱりその自然を止めちゃいけないよなあと感じたできごとだった。


***

自然にまつわるテーマをきっかけに、保育者を信頼して子どもが変化していく話や、そこから子どもがつながっていく話、「なんだろう」「おもしろそう」という興味や「やりたい」と湧き出てくるエネルギー、「思い通りにいかない」という経験のような心が動く体験を通して、その行為を会得していくんだろうなあという話など。時間めいっぱい話して、いろいろと耕された1回目のセッションでした。

みなさんが、このテーマから思い浮かぶ子どもの姿やできごとは・・・?
ぜひ読者のみなさんからも、いろんなエピソードをお寄せいただけたらうれしいです。

それでは、次回のあそび探究室レポートをおたのしみに・・・!