児童発達支援ってなんだろう?
でも、実際どんなことをしているんだろう?どんな場所なんだろう?
どんな子どもでも、得意なこと苦手なこと、心や身体の成長には違いがあり、その姿を受け止めながら子どもたちと過ごしていくことが、保育の醍醐味でもあると思います。
特に、保育の現場で発達の凸凹のある子どもたちに出会う度に、わたし自身その子の育ちやその子の保護者に丁寧に関わっていきたいと思っていましたが、そう思うほど“今の知識や経験だけではどうしても足りない…。 集団の中でケアしきれないのでは…”という葛藤も感じていました。
ほいくる編集部に入り、自分だけでなく多くの保育者さんたちも同じように感じていることを知りました。そこで今回は、子どもたちの発達の凸凹や育ちにじっくり付き合い見守る「児童発達支援」の世界について少しだけご紹介できればと思います。
HoiClue編集部 水岡 香:
保育、児童発達の現場から、HoiClueスタッフへ。
子どもたちの好奇心で溢れた姿を大切に、保育者さんの「あったらいいな」という情報を日々考え中。
大人の予想を遥かに越えた子どもたちのアイデアに出会うのが大好きです。
子どもたちから教わったこと、自然が大好きなことを活かしていきたいな・・・と思っています。
そもそも、児童発達支援とは・・・
厚生労働省のガイドラインによると、まず児童福祉法では障がいのある子どもたちの支援が保障されています。
「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」(児童福祉法第1条)
「全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。」(児童福祉法第2条1項)
児童発達支援の理念の中には、障がいの有無や、障がいの種別にかかわらず、すべての子どもの一人ひとりの意思を尊重し、最善の利益を考慮するという主旨の内容が書かれています。
このような内容を踏まえて…
- 可能な限り地域の保育や教育の支援を受けられるようなサポート。
- 同年代の仲間づくりをできるような環境作り。
- 地域社会への参加や・インクルージョンの推進と配慮。
など児童発達支援に取り組み、多様な発達段階の子の「育ち」「暮らし」の安定のための丁寧な家庭支援にも取り組みます。
児童発達支援の場とは・・・
「児童発達支援」の場は、大きく分けると児童発達支援センターまたは児童発達支援事業所があります。
児童発達支援センター(療育センター)
- 自治体が設置・運営のもと地域の障がい支援の中心として、専門的なリハビリテーションや発達支援プログラムを通して子どもたちに支援を提供し、ご家族のサポートも行う施設です。
- 日常生活における基本的動作や知識や技能、コミュニケーションを学ぶ場を作ったり、集団生活への適応するためのグループや小集団で過ごす環境を作ることもしています。
- 保育所、認定こども園、幼稚園、小学校、特別支援学校(主に幼稚部及び小学部) 等と連携を図りながら支援を行い、専門的な知識・経験に基づき、保育所等の後方支援を行います。また、「児童発達支援事業所」に対して支援を行ったりしています。
- 児童発達支援センターは地域の中核的な支援機関として巡回支援や専門員整備などを行います。
※児童発達支援センターは、2つのタイプがあります。
福祉サービスを行う「福祉型」
福祉サービスに併せて医療的ケアを行う「医療型」
児童発達支援事業所
- 基本的には、児童発達支援センターと同じような支援を行いますが地域の支援の中心ではなく、民間の運営のもと身近な療育の提供場所として、子どもたちの姿や、家族の必要に合わせてサポートします。また、医療機能は付帯していません。
- 事業所によって支援内容や支援形態はさまざまです。
支援内容:運動発達支援・コミュニケーション発達支援・認知発達支援など。
支援形態:個別指導・小集団指導など。
児童発達支援の内容とは・・・
対象は?
- 児童発達支援の対象は、未就学児の子どもたち。0〜6歳が対象となりますが、就学後は放課後等デイサービスなどのサポートもあります。
利用の仕方は?
- 居住している市区町村の障害児通所支援担当窓口に児童発達支援の利用相談をして、申請などの後、通所受給者証が交付されると利用できるようになります。
- 幼稚園、保育園の代わりに1日利用したり、午前中に幼稚園や保育園へ行き、午後利用するパターンなどがあり、それぞれの時間の中で、個別、集団での活動を行います。
実際の支援・計画の内容は?
- 総合的支援方針と長期目標を立案し、その内容をもとに「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」の5つの領域に関して、一人ひとりに合わせた支援内容を組み立てます。毎日の生活に必要なこと(動作などに加え、経験やコミュニケーション)、その子らしい生活や人生の実現を考え、ご家族とも相談しつつ計画を立てていきます。
- 子どもたちの困りや成長のようすに合わせて、運動機能や感覚機能を刺激したり、発達に合った遊びやゲームなどをしたり、職員と一対一または少人数で触れ合い、コミュニケーションを取ることを楽しめるような環境で過ごせるようにします。
また食事、排泄、着替えの機会には、それぞれの発達段階に合わせて、自信を持って生活できるようにサポートします。
どんな人たちが働いている?
児童発達支援の分野で働くことができる資格はさまざま。
児童発達支援管理責任者・保育士・児童指導員・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・心理士・社会福祉士・精神保健福祉士・教員免許・幼稚園教諭など。(施設の種類によっては嘱託医・看護師なども必要)
こどもたちの過ごし方は?
幼稚園のように一日利用する場合
9:00~15:00までを施設で過ごす場合の例
保育園や幼稚園と並行して通園する場合
- 13:00~16:00くらいまでの1、2時間
- 療育センターなどは午前から4時間程度
いずれも個別プログラムやグループ活動など一人一人に合った方法での支援。
子どもの育ちを共に支える機関として…
今回は、より丁寧に一人ひとりの子どもの姿や発達に沿って多様な角度から支援を行う児童発達支援の分野について少しだけ取り上げました。
保育の場も児童発達支援の場も、子どもの育ちや家庭を支える大切なもの。
家庭、保育、児童発達支援、地域などが色々なところで手を取り合い、繫がり合う動きが今広がっています。しかしその一方で、それぞれの機関が連携し合うにはまだ難しい課題があるのも現状のようです。
これから、それぞれの機関が特徴を活かしお互いの垣根を越えていくことで、子どもたちの10年後、20年後、もっと先の将来の姿が、彩り豊かなものになっていくことを願い、ほいくるでも、子どもたちが過ごす様々な場の紹介や、発達の専門家の方へのインタビューなどをお届けしながら、保育者の皆さんと共に、子どもたちや、子どもたちが育つ場について更に理解を広げていけたらと思っております。
【参考資料】
児童発達支援ガイドラインについてはこちら
児童発達支援センターの位置づけについてはこちら
監修:桑野恵介 先生
株式会社スペクトラムライフ代表。臨床心理士、ESDM認定セラピスト。埼玉県の入間市児童発達支援センターうぃずの受託事業者。2019年埼玉県立上尾特別支援学校特別非常勤講師、東京大学高度医療人材養成プログラム「職域・地域架橋型・価値に基づく支援者育成」講師。
小学館の保育誌『0・1・2歳児の保育』にて、「保育に取り入れられる臨床心理士のワザ」好評連載中。