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ちょっと困った子が、クラスにいますか?〜柴田愛子さんへのみなさんの回答とせんせいゼミナール『現場の子ども学』のようす〜

雨宮みなみ
掲載日:2023/11/08
ちょっと困った子が、クラスにいますか?〜柴田愛子さんへのみなさんの回答とせんせいゼミナール『現場の子ども学』のようす〜
連続オンライン講座『現場の子ども学』(せんせいゼミナール)に寄せて、りんごの木子どもクラブ代表、柴田愛子さんからみなさんにさせていただいた質問。

寄せられた回答と、セミナーでの愛子さんのお話の一部をご紹介します。

今回の愛子さんからみなさんへの質問

ちょっと困った子が、クラスにいますか?

「いる」を選択した方が100%という結果に。

「いる」と答えた方に質問です。どんな対応をしていますか?

「危険がない程度に、自由にさせておく」と回答した方が一番多く、40%弱。
続いて多かったのが、「なるべくみんなと一緒にやるように誘う」という回答で30%弱、という結果でした。

その他を選択した方の回答

・その子のその時のねらいに合わせて、参加方法を考える。

・その子の思いをくみ取ってできる限り納得できるまでつきあう。

・その子が何をやりたいのか把握し、気持ちに寄り添った対応。

・その子が納得出来るまで待つようにする。ただ、目が離せないので、最低限フリーの職員がいるときは連携して、そうでない時は目が届く所までは、連れてきておくようにした。


など、その時々の状況に合わせて対応(関わり方)が変わる様子が伺えました。

これまでにあなたが乗り越えたコツがあれば教えてください。

自分の関わり方に関すること

・その子と仲良くなる。

・まずはその子に興味を持つ。

・困った子は困ってる子であると思うので、まずは気持ちを聞くようにした。

・その子の興味に寄り添い会話するよう心がける。

・本人のこだわりを認め、どうしたらいいかを一緒に考えてみた。

・わかりやすく話すことや、無理強いしない。

・一歩引いて大人の都合かどうか考えてみる。

・困った子が何をしたいのか何を思ってるのか見ながら、時と場合により、行動を肯定したり、誘ったり、本人の意思をできるだけ尊重していくと、話は聞いてくれるようになります。

・その子の思いをくみ取ってできる限り納得できるまでつきあう。別の動作を保育士がまずしてみてその子の判断を待つ。

・その子が興味がありそうなことに誘いながら次の行動に誘導していく。

・見方を変えるようにしてみて、環境を変えたり、関わりを変えて困っている子の味方になる。

・無理に誘わずできる範囲でやる。子どもにも保育士の自分にとってもお互いにストレスなく参加出来る。

・なるべく一対一で関わる時間を持つようにしていたが、一人担任の時はどうしてもその子の対応に追われると他の子を待たせたりすることになってしまいジレンマだった。

・無理に合わせるのをやめた。 その子をみんなに合わせることも、その子に合わせるのも、私が周りの目を気にすることも。 子どもにも私自身にも大きな負担となっていたので無理することをやめた。 流れに身を任せていたらできる、少しだけ気持ちが軽くなった。

・コツが分からず困っています。ただ、あなたが大切だというメッセージは送りつつ、今何をすべき時かを考えさせるようにして、頭ごなしに叱らないようにだけはしています。

・支援が必要な子については、出来る範囲で、出来る機会のときに行う。
個別対応しながら、子どもの気持ちに寄り添うことを心がけ、またやりたい気持ちにつなげていっています。

・その子をまるごと受け止めること。1人で考えずに、周りの先生たちや保護者と一緒に考えること。

環境に関すること

・一斉活動にこだわらない。

・落ち着く場所へ移動して話す。

・2歳児の子、クラスの中に入ると周りの子が近くに来ただけで噛む、蹴る行為が出てしまうため、その子が一人で存分に好きなことをできるスペースを作った。朝や夕方、みんなで過ごさなければならない時間帯には、年長クラスの中で遊ぶようにする、など職員をみんなでその子のこと理解して過ごし方の工夫をした。


保育者間に関すること

・1人で悩まず、同僚に相談や、愚痴を聞いてもらう。

・焦らないこと 焦らない状況づくりとフォロー。焦ると子どもを叱ったり何で?!と声が大きくなったり。結局話が届かず遠回り。人が変わるとやり取りができることもあるので、職員間の連携と情報共有が大事。

・ネチネチ怒らないということや贔屓しないことなど、職員間で対応は一貫性を持していて、本児に関することはエピソードトークで周知し、笑って話せるチームで担任を持つ。毎日問題は山積みでスモールステップなので「乗り越えた」と感じることがほとんどないけれど保育士間のチームワークが何より大切だと感じる。

寄せられた回答を受けて


愛子さん:
この乗り越えたコツを読ませてもらって、もう感動的だった。みんな素晴らしいって思うのはね、ちゃんと困ったことに対して工夫しているってことなの。なんかやっぱり、いろんな子と関わっていくことで、保育力が高まっているというかね、ホントみんなすごいなぁと思いました。

今回「困った子ってどういう子?」というタイトルにしたのはね、私はあんまり困っていないんだけど(笑)、困っている人が多いんですよね。

私が保育者になった頃には「発達障がい」という言葉はありませんでした。自閉症やダウン症はいたけれど、そういうのはあんまり気にしないできちゃったんですね。
近年、発達障がいという言葉が登場してから、なんだか「犬も歩けば棒にあたる」ということわざみたいに、歩けば発達障がいの子に出会う、というか。さっきのアンケートでも100%の方が“困った子がいる”と答えていたように、本当にみんな困っているんだなと思って。ちょっと癖があるとか障がいがあるとか、そういう子が増えたのか、それとも個々が目立つようになったのか、よくわからないんですけどね。

困るというのは、その園の保育スタイルによっても変わるじゃないですか。例えば、一斉保育のなかで一緒にやらない子は、やっぱり保育者としては困っちゃうわけですよね。それから、性格的に几帳面な方は、けっこう保育がつらいと思うのね。私みたいに「あら、あの子あっち行っちゃったわ」なんて思えなかったり、全ての子どもに保育を保障しようとかいろんな思いがあったりする方は、けっこう困ってしまうというのもあるのかなと思うの。

「困った子」という言い方ってね、困っているのは誰か?と考えると、それは保育者なのよね。困っているというのは主観的な言葉だから、その困り方も人によって違う。

私の気持ちを、とても的確にコメントくださった方がいるので、ちょっと読ませていただきますね。

「気になる子、という概念がよくわからなくなっています。1歳児のクラスを見ていると、どの子も気になり、どの子も気になりません。“気になる”の主語は、保育者。見る人の目線で、担任が変わると評価・印象も変わります。この子ってこういう子なんだってそのまま受け止めていると、誰も気にならないと思います。」

そうなんですよね。困った子って思っている、「あなたが」困っているんですよね。だから、人や保育スタイルが変わると、その人は困らないかもしれない。


『現場の子ども学』オンライン講座のようす

さまざまな子どもたちのエピソード、そして愛子さんがりんごの木を始める前の保育で出会った子どもたちとのエピソードなど、盛りだくさんだった今回。
みなさんにもぜひ共有できたら…と感じた愛子さんのメッセージを一部分ご紹介します。

「専門家は、その子の専門家ではありません。保育での対応に関しては、私たちがその子の専門家です。私たちは子どもの群れのなかで、子どもの力を借りながら、不可能を可能にできていくんですね。だから、私たちができることを可能なやり方で(アンケートの乗り越えたコツのように)試行錯誤しながら、ああやってみたりこうやってみたり、あぁこれだめだぁ…なんてしながら、やっていけばいいんじゃないのかなって。(中略)
群れのなかで育っていく、あそびを通して育っていく、そのなかに、専門家の意見を参考として頭のなかに入れていったらいいんじゃないかなと思うのね。」

「ありのままを受け止めてくれる保育者がいることで、子どもたちは安心した日々を送れます。それは、自分だけに対してではなくどの子に対してもそうであることを子どもはちゃんとみています。」

一つひとつのエピソードに、そして愛子さんのあたたかいメッセージに、心も頭も耕された、豊かな時間でした。

次回のお知らせ

次回の開催は、11月28日(火)です。
今回もまた、愛子さんよりみなさんへ質問をさせていただいていますので、ぜひみなさんの声をお寄せください。

好きなことをして遊べる時間がありますか?〜柴田愛子さんよりみなさんに質問!(せんせいゼミナール『現場の子ども学』 ✕ HoiClue企画)〜

次回のテーマは、「好きなことをとことんやり続けてみませんか?」。
みなさんの園では、子どもたちが好きなことをして遊べる時間がありますか?

質問は、イベントの申込み有無に関わらずどなたでもお答えいただけます。
(もちろん、講座へのご参加も大歓迎です。質問への回答を元にした愛子さんのお話を予定していますので、お楽しみに!)

※回答受付期間:2023年11月15日(12:00)

詳細はこちら

【せんせいゼミナール】現場の子ども学 ~保育に効くビタミン剤~ <第8回>


テーマ:好きなことをとことんやり続けてみませんか?

秋も深まり運動会も終えたころ、「りんごの木」では「とことん週間」を迎えます。「とことん週間」とは、自分で決めた好きなことをとことんやり続ける一週間です。 穴掘り、探検、崖登り(子どもは町のどこに難易度いくつの崖があるか知っている!)、縫いもの、ラーメン屋さん、マラソンなどなど、その年度によっていろいろです。
好きなことをやり抜くには当然ながら、さまざまな困難が立ち現れます。それを乗り越えていくときチームの関係性が変わってきます。仲間意識が高まっていくのです。
自らの「やりたい」を実現したときの満足感と達成感は自信に繋がります。

詳細はこちら