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【アンケート結果】子どもたちの安全、どう守っていく?〜保育者さんアンケート〜

雨宮みなみ
掲載日:2022/11/29
【アンケート結果】子どもたちの安全、どう守っていく?〜保育者さんアンケート〜
どうしても年内にみなさんと一緒に考えたい、という思いから実施した、「子どもたちの安全」をテーマにしたアンケート。

昨年に続いて今年も起きてしまった園バスの園児置き去り事故後、安全管理マニュアルの作成や車内への安全装置の設置など再発防止に向けた動きが進んでいますが、子どもの安全を守るためには、インフラ面の整備だけではなく他にもまだ、私たちにできることがありそうです。

明日も笑顔で登園してくる子どもたちの安全をどう守っていくか。

みなさんから寄せられた回答を、ご紹介します。
改めて振り返り、これからに向けてみんなで考えていく機会にしたいと思っています。

【保育者さんアンケート】
子どもたちの安全、どう守っていく?

実施期間:2022年11月15日〜11月21日
回答数:40件

今年度、保育のなかで子どもの安全について不安に思うできごとはあった?

上記に対して、園でなにか対応をしましたか?


今年度「保育のなかで子どもの安全について不安に思うできごとはあった」と回答した方の内、実際に園で何かしらの対応をした、と答えた方は72.7%という結果でした。

不安に思ったできごと…具体的にはどんなこと?/園での対応は?

実際に、どのような場面で安全面への不安を感じたのか。
それに対して園ではどのような対応をしたのか、聞いてみました。

ケガに関すること

・0才児クラス
クラス保育室で室内用すべり台から頭より転落。前転をするようにうまく受け身の体勢をとったため、大事には至りませんでしたが、ヒヤッとしました。

→ヒヤリ・ハットで全クラスに周知、滑り台使用の際は必ずそばに大人がつくこと、万が一転落しても最小限のダメージで済む用マット敷いた。

・乳児クラスでの転倒やぶつかったりした時の当たり方が酷かった時。

→保育士の配置場所の考慮

・1歳児が、3歳児未満の使用を禁止している屋外の総合遊具に登って行ったこと。

→特性の強い子どもだったため園内研修で保育者間でのヒヤリハットの共有を行って、担任外保育士も対応できるようにした。

・3歳児、室内で工作でハサミを使用している時、立ち歩いていつもケンカをふっかける子のところへ行き髪の毛を切ってしまった。

→ハサミを使用する際は必ず座る。落ち着きのない子等はテーブルを別にして職員の側で作業してもらう。

・午後の保育中、ブランコに乗っていた4歳女児が誤って手を離し、後方へ転落。後頭部と背中を打つ。

→職員全体への事故の周知、安全管理マニュアルを確認し、特に事故後の対応について話し合いを行った。

・遊具での事故が多く、怪我をしてしまう。

→事故発生報告書を書き、職員全員に共有、同じ事が起こってしまわないようにする。


体調不良に関すること

・熱中症

→エアコンの設置


子どもの人数確認に関すること

・給食やおやつを作る関係上、毎朝10時までに調理員にその日の登所予定人数を知らせるが、登所する予定の子について連絡がなかった場合には休みとしてカウントしていた。

→毎朝9時までに登所するのか休みなのか保護者に連絡してもらうようにしている。連絡がない場合には、保育所から連絡をするようにしている。

・年少児が本来バスに乗らないのに間違って乗車していた。職員も気づかず出発してしまった。

→人数確認を一人でするのではなくバスの運転手も一緒に確認し二段階確認を徹底した。

・新年度が始まったばかりで新しい職員もおり、まだ保育士間の関係性が築けていない状態で夕方の散歩に出かけ、確認が不十分で置き去りになりそうなことがあった。

→これまでも散歩の出発前と到着時、遊んでいる途中、帰園前、帰園後のチェックリストは各クラスであったが、担任以外の人だとチェックが甘いことがあったので、徹底するようにした。

・涼しくなり0歳児久しぶりの散歩。フリーの先生2人と担任(自分)と散歩に行ったが、担任ともう1人のフリーの先生に了解を得ず、フリーの先生が1人で園に帰ってしまい、公園内で子ども1人一時的に目が離れてしまったこと。

→すぐに話し合いをし、フリーの先生とも後日しっかり話し合い、ヒヤリハットを書き振り返り、園全体へ共有した。

・4歳児。散歩に連れて行ったつもりが行っておらず、一人園庭に残って他クラスと一緒に遊んでいた。

→人数確認方法の確認、統一。

・夕方の延長体制に入り、入室のタイミングで子どもの点呼をとっていると、まだ降園していないはずの子どもが見当たらなかった。 結局、降園時間を保護者が記入し忘れていたという出来事であったが、ヒヤッとした。

→ドアの建て付けが悪く、開けっぱなしにしていたので、直るまでパーテーションを設置し、ドアを直す。こまめな人数確認。自分の目の前に居る子どもだけでなく、他の子にも目を向ける。


子どもの抜け出し(脱走)に関すること

・夕方の合同保育中、1歳児クラスの開けていたドアから0歳児が保育室から抜け出した。

→延長体制に入ったタイミングで保育者がその時間にいる子どもを把握する。 保護者に降園時間の記入を徹底してもらう。

・3歳児が、保育室フロアーでちょっとしたトラブルでパニックになり逃走し、園内であったが脱走した。

→人数確認、子どもへのケア等。

・5才児。運動会練習のとき隣のグラウンドから園を行き来していて、1人勝手に移動していたこと。 道中、公道はないものの、車の出入りはできる場所なので、ひやっとしました。

→園内で話をし、必ず子供と一緒に行動することを徹底した。

・母親が迎えにきたときにオートロックのボタンを押して出て行こうとした。

→オートロックのボタンは子供に触らせないことを保護者にも子供にも徹底して伝え、子供が触れない工夫もした。

・お迎えの時に勝手に園庭で遊んでいて門から出て行こうとした。

→保護者の方が門のところに来るまで子どもの名前は呼ばず来てから子どもの名前を呼ぶようにした。

・園内の子どもが出ていきやすい場所を改めて保育士間で確認すると子どもが出やすい隙間や入り込みそうな場所がたくさん見つかった。

→隙間をできるだけふさぐように対策、入り込めないように柵を立てるなど マニュアルの見直しと実際に訓練してみるようにした。


そのほか

・トイレから園舎の裏側へ出る勝手口があるのですが、常に施錠されてなく、子どもがいつ出ていくか、まて不審者がいつ入ってくるか分からない。

・園で初めて子どもたちも参加する不審者対応の避難訓練を行った。不審者が来た想定で実際に動くと色んなことが分かったし、本当の不審者が来た時の怖さを改めて感じた。

→不審者対応の細かな所を見直し、マニュアルにも足していった。子どもたちを一時避難した後、不審者対応の応援に行くことや近所の人に助けを求める、二時避難も想定するなど。。やるべきことが沢山あった。


怪我に関すること、子どもの人数確認に関すること、子どもの抜け出し(脱走)に関する回答が、同じぐらいの割合で集まったのが印象的でした。

「まさか」「どうやって…」といった予測が難しい子どもの動きや、保育者間でのそもそもの連携について改めて見直しが必要な出来事や対応などが上がりました。

上記の経験から、子どもたちの安全を守っていくために大事なこと、自分自身で改めて意識していきたいことは…?

ケガに関すること

・目を離さない。

・冷静で迅速な対応。

・子どもの動きを広い視野で見ながら、迅速に対応する。

・小さな違和感(あれ危なくないかな…)など気になることは声を上げていくしかない。

・職員間での共有と一人ひとりにしっかりと向き合い常にどこに誰がいるかの人数確認、把握を行うこと。

・保育環境をもっと手厚くしたい。国の規定の人数では保育が回らない。年々グレーゾーンの子が多くなってきていると感じているので、20人をひとりで見ることが難しい。

体調不良に関すること

・こまめな水分補給。静かな遊び。


子どもの人数確認に関すること

・どんな時も人数確認を心掛けること。

・時間がかかってもきちんと人数を確認する。

・人の出入りを気にするようにしている。

・保育士同士の連携。

・あそびの中でも子どもの動きを確認して、人数確認をする。職員間で情報共有する。声を掛け合う。

・当たり前とか、いつもしているから大丈夫と思わずに、小さなことでも確認しながら行動すること。

・誰が帰ったか、いるのか、遅番で日頃関わりの少ないクラスの子を見ることも多いので常に把握が大切だと改めて気づいた。

・歴が浅い、長いに関わらず、相手に任せきりになるのではなく、自分で守るという当事者意識を持ち、お互いに声をかけあってタブルチェックができたら良いくらいの気持ちでいること。

・バスに乗る時は子どもの顔と名前を一人一人確認しバスの運転手とも二重確認と担任からの伝言などで子どもの乗り間違いや私間違いを防止している。また不安があれば自己判断せず園に連絡してから対応するようにしている。

子どもの抜け出し(脱走)に関すること

・昨日よくても明日は危険な事があるかもしれないと思い、気になる危険な事はメモをとるようにしている。

・こまめな人数確認。「あの子は○○するかもしれない」と考えた上で臨機応変に動けるようにする。

・たぶん大丈夫と思わずに小さなヒヤリハットを検証する。

そのほか(不審者対応について)

・日常の慣れに流されず、大丈夫と過信しないこと。

・今不審者が多いので、周りの環境もしっかりと常に確認して、いち早く不審者に気づけるようにする。

園に対して、望むことがあれば教えてください。

人員や加配に関すること

・職員を増やして欲しい。

・発達障がいに理解がある保育士を増やして欲しい。

・せめてあと1人でも大人が多くいれば、遊びの中でも保護者対応中でも、安心して仕事ができると思う場面が多すぎる。

・ギリギリの人数でなく、余裕ある職員配置にしてほしい。

・人件費をケチらないでほしい。規定の人数だからひとりで見てと吐き捨てられたら、もうこの園では働けない。


連携や体制に関すること

・強いて言えば、クラス内での話し合いが安心してできるように、1日通して、フリーの職員が入ってほしい(職員体制には比較的恵まれている方だとは思いますが…)。

・パートも正規職員も関係なく、みんなが同じ責任感と意識をもち、早朝から夕方まで保育を行う。

・若手が発信したことも親身に受け止めてくれる環境であり、保育所の危機管理面でのルールをすぐに変えてくれたこと。今後も誰でも疑問や意見をそのまま伝えられる環境であって欲しい。


マニュアルに関すること

・いろいろなことに関する、マニュアルを作ること。

・具体的なマニュアルが欲しい。


環境に関すること

・フェンスの高さを高くしたり、ネットをはる。

・乳児と幼児向けの園庭整備。

・最近配置の遊具が過去に死亡事故があるものだったので、デザイン性ではなく安全面の重視。


そのほか

・保育士がいくら安全チェックして報告しても、何も改善されないので、少しでも改善していって欲しい。

・経営者の都合がどうしても強いられ、子どもの育ちが軽視されてしまうこと。

・保育士の声を、真摯に聞いて欲しい。

・職員の声を聞くだけではなく、実践して欲しい。

・多種多様な人がいるので、取りまとめるのが大変だろうなと思います。採用する会社側が、もっと厳選する必要があると感じます。

国に対して、望むことがあれば教えてください。

人員(配置基準)に関すること

・単純に人を増やして欲しい。

・保育士の配置基準の見直し。

・0歳児は2人に保育士1人など手厚くする。

・保育士の人員不足を何とかして欲しい。人員不足は何が原因なのか、どうしたら改善されるか考えて欲しい。 1歳児6人に対して保育者1人のカウントは誰が決めたのか。これを改定してほしい。

・グレーゾーンと言われる子が増えてきて保育士の定数が正直足りないと思う事がある。保育士定数の見直しを考えて欲しい。

・配置基準を増やしてほしい。または園に事務員、用務員なで加配職員を義務付けしてほしい。

・保育士の配置人数、どうにかして。様々な配慮が必要な子が沢山いるのに、一対30なんてムリです。やれと言うなら一度やってみてください。

・保育士の人員を手厚く!3歳児20人に対して保育士ひとりというのは、おとなしく座って話を聞けて、こちらの言うことを理解できる子20人の場合です。確かに昔に比べたら手厚くなってはいるのでしょうけれど。さまざまな発達の子がいる中、この状態では離職も進み就業したい人も減るのは目に見えています。


待遇改善に関すること

・人手が足りない=子どもを守れないに直結すると思う。資格を持つ人は十分にいるのだから長く安心して働ける待遇を求めたい。(給与など)そして人を増やしてほしい。

・保育職の全体的な賃上げ。給料と仕事内容が合わなくて辞める人が多く、有給はもちろん昼休みすらない。

・保育士の待遇に不満。求められるものは増えているのに、待遇が悪いと感じる。残業手当も、三十分以上しないと出ない。早番遅番の手当てもない。

・賃金を上げること。男性保育士も増えていくから。

・保育士の給料形態を変えてほしい。 もう少し上げてくれるだけで人数が増えその分事故が防げるだけの人手を確保できる。

・保育士の給料ベースアップ(命を守っている場所と認識して欲しい)。

・安全が大事というなら、それなりの配置基準を。質のいい保育というなら、それなりの給料を。


そのほか

・保育士が日々行う安全チェックリストを監査で提出するなら、それに対する経営側の対応もきちんと記載、報告してほしい。

・施設の修繕や危険箇所の対策をお金や時間を理由に後回しにしないで。

・国以上に人員配置している園に対してはプラスの補助金等をお願いします。プラスの配置を努力している園がもっと、もっと評価される世の中になってほしい。

***

アンケートに協力してくださった皆さん、ありがとうございました。

常に意識的に全体に目を向けつつ、子どもの行動や次の活動に見通しを持って動き、その中で個と向き合うことが求められる保育者の役割。
神経と体力を使う日々での保育者の物理的なゆとりや、業務環境を支える仕組みの必要性を改めて感じます。

一方、インフラ面の整備だけで子どもたちの安全を保つこともまた難しく、「これで安心」がないからこそ、さまざまな立場や視点から考えたり、情報交換や議論、見直しをし続けていくことの重要性も感じたアンケートとなりました。

「続けていく」ことには難しさも伴いますが、HoiClueでも引き続き「子どもたちの安全を守ること」について時に立ち止まり向き合う取り組みをしてきたいと思っています。

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アンケートに協力してくださった方の属性について

勤務先

お立場

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HoiClueでは今後も様々なテーマでアンケートを実施し、みなさんの声を共有していく予定です。

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みなさんの園での安全対策やヒヤリ・ハットの体験について、うかがいました。