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「子どもに寄り添えたなぁ」と感じたのはどんなとき?〜【アンケート結果】子どもに「寄り添う」ってどういうことだろう?〜

竹原 雅子
掲載日:2022/06/28
「子どもに寄り添えたなぁ」と感じたのはどんなとき?〜【アンケート結果】子どもに「寄り添う」ってどういうことだろう?〜

保育者さんアンケート、「子どもに「寄り添う」ってどういうことだろう?」。
前編では、日頃のご自身の子どもへの「寄り添う」をみなさんに振り返っていただきました。

後編はエピソード編。
「これまで“子どもに寄り添えたなぁ”と感じたのは…?」。
共感したり、気付きがあったり、改めて子どもに「寄り添う」ということの意味を問いかけられる体験やエピソードが寄せられました。
また、子どもに寄り添うときに心がけていることも、聞いてみました。

【アンケート】
子どもに「寄り添う」ってどういうことだろう?〜保育者さんアンケート〜

実施期間:2022年6月14日〜6月20日
回答数:143件


これまで「子どもに寄り添えたなぁ」と感じたエピソードは?

食事中に急に泣き出したが 静かに側に寄ってしばらく 大丈夫だよ、と慰めた。
安心した女児(3歳)は声にならない声で「シーソー…」と言えた。
乗りたかったことが伝えられた事でとても落ち着いて 食事を続けてくれた。
(認可保育所/保育者(非常勤・パートタイム)/3年以上〜6年未満)

物を作るときになかなか出来ず最後まで寄り添って関わったら完成して喜んだ姿。
(認可保育所/保育補助/3年以上〜6年未満)

トラブルや、問題があったとき、子どもの発することばや行動を聞き、解決した後に、子どもが見せる表情、行動に変化が出てきた。
(こども園/保育者(常勤・正規職員)/20年以上)

食べかけのものを友達の皿に戻そうとした1歳児。
それは出来ないので、自分の皿に戻すよう促すと怒る。皿を間違えている?と思い、入れ替えても怒る。どんどん怒る。このままでは食事自体が終わってしまう。
その時、その子の視線の先にあるのはもしかして…と思い、「ぞうさんがいたんだね!」と言ってみた。
するとニッコリ!!そのお皿がいいの!!と言っていたことに気付いた。
あのままその子の願いに気づかなければ、ただの気まぐれ、困った行動としていたのかもしれない。
(地方自治体独自の認証保育施設/保育者(常勤・正規職員)/20年以上)

赤ちゃん返り?と感じる行動をする2歳女児。
赤ちゃん返りなのか、他に要因があるのか、毎日その子に一対一で関わる時間、保護者と思いを共有する時間を持った。
食べることが大好きな子が全く食べず泣き叫ぶ。女児をだっこし、膝にのせ、たまにはだっこで食べようかーというと大きな口を開けてパクパク食べ出した。
こうしてほしかったんだよね、甘えたかったよねと愛おしくてたまらなくなりました。
(認可保育所/保育者(非常勤・パートタイム)/20年以上)

外国籍の2歳児が入園。無理なく園生活に慣れていけるよう、側に居てその子の目線を見て、何に興味があり、何に不安を感じているのか理解しようと寄り添った。
食事も午睡も不安で泣き出していたが、抱きしめて一緒にみんなが食べたり、寝ている様子を見る。その空間にいられる事から始めた。
1ヶ月、3ヶ月、半年と笑顔が増えgood!と親指を立てたり、手を合わせタッチし喜び合えた時は寄り添えている!と嬉しくなった。
(認可保育所/保育者(非常勤・パートタイム)/10年以上〜20年未満)

入園当初、遊びたくないと言う3歳児の気持ちに寄り添いながら、毎日少しずつ外遊びしている様子が見える場所で座ってもらえるように配慮した。
1ヶ月後には笑って走り回る姿が見られた。
(幼稚園/保育者(常勤・正規職員)/20年以上)

実習生に先生のような包容力のあるような先生になりたいです、と言ってもらえた時に、子どもに寄り添えているのかなと思いました。
素直に嬉しかったです。
(認可保育所/保育者(非常勤・パートタイム)/10年以上〜20年未満)

クラスから離れ、園庭の隅でポツンと座り込んでいた男児。横にそっと一緒に座り、何気ない話をしていると、
『パパいなくて寂しい』とポツリ。
『そっかぁ、寂しかったね』と言うと、ギュッと抱きついてきたので、膝に座らせ、またしばらく話しながら『今日は何をするのかなぁ』などと男児のクラスの活動の話などしていると、スクッと立ち上がりにっこり笑ってクラスの方へ…
その後、クラスの活動に楽しそうに合流している男児の姿を見て嬉しく思った。
(こども園/保育者(非常勤・パートタイム)/10年以上〜20年未満)

戸外散歩の際、手を繋いで歩いている子の興味のあるものを見つけ立ち止まった場合、「何見つけたの?」と言いながらしゃがみ、話し掛けながら楽しい気持ちで観察する。
歩き始める時には「あっちにもあるよ!」と楽しい気持ちが続くように声をかけて移動し、子どもが終始笑顔で散歩を終える事ができた。
(認可保育所/保育者(常勤・正規職員)/6年以上〜10年未満)

鉄棒の逆上がりができない子に、できないから諦めるのではなく、一緒にあーだこうだ言いながら、試行錯誤をして何日も何日も練習。出来たときに一緒に喜び会えたときに、寄り添えたなぁと思いました。
(こども園/保育者(常勤・正規職員)/3年以上〜6年未満)

一昨年5歳児を担任した時に、ドッチボール大会に向けての練習試合後、子どもから作戦会議をしようと言われた。(認可保育所/保育者(常勤・正規職員)/10年以上〜20年未満)

なかなか自分を出せない子。無理強いをせずにずっと様子を見守り、何が好きなのか何に興味があるのかを知る努力を続けた。少しずつ自分の気持ちを言葉にしたり表情も柔らかくなっていった。
1年後にはたくさんおしゃべりをして様々な場面で力を発揮できるようになった。
このエピソードを通して、子どもにも自分のタイミングや意思があり保育者が待ったり心を寄せていくことでさらに自分を発揮できるのだなと思った。
(こども園/保育者保育者(常勤・正規職員)/6年以上〜10年未満)

貸してほしい玩具があっても何と言えば良いのか分からず叫んでいるお子様がいました。
気持ちを受け止め代弁し、更に一緒に言ってみると貸してもらえました。
その後自分で恐る恐る言ってみる姿がありました。言いながらこちらをチラッと見ており、頷くとニコッと微笑み返してくれました。
少しずつですが自信に繋がればと思います。
(認可保育所/保育者(常勤・正規職員)/10年以上〜20年未満)

0歳児担任の時のことです。秋頃になり、高月齢の子が何かと反抗してみたり、他児に手を出したり、嫌なことがあると大声で泣いたりしていました。
その原因は何なのか?保育士はどう対応するか?複数担任で出来ることは何か?担任で話し合いました。
その子は元々、甘えん坊だけど、こちらの言っていることもしっかり理解していて、器用に出来る子でした。でも秋頃になり、周りの子どもたちも色々なことが出来るようになり、その子にとっては大きな環境の変化だったのでは?という話になり、しばらくはその子が落ち着いて過ごせるよう対応することとなりました。
対応の仕方は何かをする時にはその子を最初に呼ぶとか一対一で廊下を散歩するとか、さりげなくその子に「先生たちはあなたのことをちゃんと見てるよー」というアピールができるようにしました。
しばらくすると、以前のような行動がぱったりみられなくなりました。
子どもに寄り添うとはこういうことかと改めて実感しました。
(認可保育所/主任/10年以上〜20年未満)



子どもに寄り添うために、心がけていることは?

・しっかりと子どもを観察し、何をしたいか、何をしてほしいか、またその子がどのような思いで取り組んでいるのかを探る。
(認可保育所/施設長・園長・副園長/20年以上)

・子どもの心の動きに気がつけるように行動の流れをよく見るようにしている。
(認可保育所/保育者(非常勤・パートタイム)/3年以上〜6年未満)

・子どもを無理に変えようとはせずに、自分自身や環境を変える。
(幼稚園/保育者(常勤・正規職員)/20年以上)

・子どもとの距離感が近すぎない、遠すぎないこと。
(認可保育所/保育者(非常勤・パートタイム)/10年以上〜20年未満)

・どんなに小さくてもリスペクトの想いを忘れず接します。
こちらの想いは、いつもあなたに向いている。すてきなあなたを知りたいよ、といつも思っています。

(認可外保育施設/保育者(常勤・正規職員)/6年以上〜10年未満)

・個々がそれぞれ何に目を向けているか、しっかり観察すること。
(認可保育所/施設長・園長・副園長/20年以上)

・自分の心に余裕を持つこと。
余裕が無いと、寄り添うことも気持ちを受け止めることも出来ない。

(認可保育所/保育者(常勤・正規職員)/3年以上〜6年未満)

・その子がして欲しい事の前に、して欲しくない事を知ること。
嫌な事の記憶は強く残り、信頼関係の構築が阻害されてしまうので。

(幼稚園/保育者(常勤・正規職員)/10年以上〜20年未満)

あなたの味方だよということを伝え続ける。
(認可保育所/保育者(常勤・正規職員)/20年以上)

・子ども達が困難さを感じている時、この子の今の状況や家庭環境、背景などを知り様々な方面から見つめ、必要なサポートを見つけていく。
(認可保育所/保育者(常勤・正規職員)/10年以上〜20年未満)

・目線を合わせ話を聞く。
(認可保育所/保育者(非常勤・パートタイム)/20年以上)

・子どもがやりたい事に、「ダメ」と言わないようにしている。
(認可保育所/保育者(常勤・正規職員)/10年以上〜20年未満)

・言葉を発する時に肯定言葉に変換する。
(認可保育所/保育者(非常勤・パートタイム)/10年以上〜20年未満)

・気持ちの先回りはしない。
(認可保育所/保育者(非常勤・パートタイム)/20年以上)

『子ども』ではなく、大人より少し経験値が少ないだけのひとりの人間として接している。
(企業主導型保育園/保育者(非常勤・パートタイム)/6年以上〜10年未満)

・子どもが何を見てどう感じて何を伝えたいか、大人が声かけし過ぎないようにしています。
(認可保育所/主任/10年以上〜20年未満)

・友達を叩いてしまった場合でも、頭ごなしに注意するのではなく、冷静に理由をたずねる。
(こども園/主任/20年以上)

・一人ひとりの性格や特徴を捉えて、今どんな気持ちかを受け止められるようにする。
(認可保育所/保育者(常勤・正規職員)/10年以上〜20年未満)

・一人ひとりの表情を観察しています。
言葉に、出来ない感情のうごきが、表情に出てくるので、見逃さないようにしています。

(認可保育所/保育者(常勤・正規職員)/10年以上〜20年未満)

・小さなつぶやきを聞き逃さない。
(こども園/保育者(常勤・正規職員)/10年以上〜20年未満)

・目の輝きや 集中してることに気づくこと。
(認可保育所/潜在保育士(子育て中)/1年以上〜3年未満)

・保育者は子どもとともに生きる一員である。
正解も不正解もない。今、このときに一人ひとりが感じたことだけはほんとうのこと。

(認可外保育施設/保育者(非常勤・パートタイム)/6年以上〜10年未満)


***

子どもに寄り添えたと感じる瞬間やできごとは、保育者のみなさんにとって、大切でかけがえのない体験なのだろうと、改めて感じました。
全てのエピソードをご紹介できないのが残念ですが…
振り返りながら子どもとのやりとりを丁寧に綴ってくださり、読んでいて胸が熱くなりました。
回答にご協力いただいたみなさん、ありがとうございました!

同じ人間は一人としていないように、子どもも大人が関わり合う保育も、そして子どもに「寄り添う」ことも、明確な定義や正解はないのだろうと思います。

あなたにとって“子どもに寄り添う”とは…?

ちょっと立ち止まって振り返ってみたり、目の前の子どもたちとの日々に置き換えて考えてみたり。
みなさんから寄せられた声が、そんなきっかけになれば嬉しく思います。

***


回答者の属性について

勤務先


お立場




保育歴(子どもに関わるお仕事の経験年数)



最後までお読みいただきありがとうございます!
HoiClueでは今後も様々なテーマでアンケートを実施し、みなさんの声を共有していく予定です。(今回のテーマも、みなさんの回答を元にもう少し踏み込んで考えていけたら…と思っています。) 

この記事の連載

今、子どもに寄り添えていますか?〜【アンケート結果】子どもに「寄り添う」ってどういうことだろう?〜

「“子どもに寄り添う”って、どういうことなのかな…?」
今回のアンケートでは、そんなちょっとふわっとした、でもしっかり語り合うこともなかったテーマについて聞いてみました。

「今、あなた自身は子どもに寄り添えていますか?」
ちょっと振り返ることで見えてきた、回答者のみなさんの子どもへのまなざしをお届けしていきます。