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「感情が過ぎ去ってしまう前に、たくさん話し合ってほしい」ー 青山誠さんが保育語りbarで語った思い

三輪ひかり
掲載日:2020/05/29
「感情が過ぎ去ってしまう前に、たくさん話し合ってほしい」ー 青山誠さんが保育語りbarで語った思い

新型コロナウイルスにより、多くの保育園や幼稚園が休園したり、各家庭に登園自粛のお願いをしたりするような形で新年度がスタートした、2020年。

今まで経験したことのないような不測の事態の連続に、保育者のみなさん、そして子どもたちも、不安を感じながら、手探りで毎日を過ごしていることと思います。
また先日発表された緊急事態宣言の全面解除により、子どもたちがいる日常を少しずつ取りもどしたり、子どもたちを受け入れる準備が始まったりと、新たな動きが出てきている園もあると思います。

しかし、新型コロナウイルスが発生する前と同じような保育や生活ができるのかと問われたら、それはまだ誰にも分かりません。ここからまた、先の見えない不安を抱きながら、日々子どもたちを迎えいれ、保育をしていくことになるでしょう。

そんな状況のなかでも、「保育者には下を向かないで前を向いて立ち上がってほしい」という思いから、保育者のための語り場「保育語りbar」は、上町しぜんの国保育園園長の青山誠さんをゲストに迎え、5月19日にオンラインイベントを開催しました。

その名も「語りBARのおつまみラジオ~Withコロナの今、現場からあおくんへの一問一答~」。

私も当日視聴させてもらったのですが、保育語りbarのみなさんの声と、青山さんからのメッセージに、同じ保育者として励まされ、保育について改めて考える機会となりました。

その場を通して語られていたことを一人でも多くの子どもと関わる人へ届けたいと感じ、ほいくるでも記事として発信させていただこうと思います。

保育語りbar

保育者のための語り場。保育者4人が主催し、活動をはじめて今年5年目になる。子どもに関わる大人たちが互いの立場、年齢や職の垣根を越えて語り合い、受け取るだけの学びではなく、みんなで学びあう場づくりを目指している。
https://www.facebook.com/hoikukataribar/

【メンバー】
石上 雄一朗さん(代表):
保育士。社会福祉法人東香会 上町しぜんの国保育園にて、4-5歳児を担当。副主任もしている。

神谷 潤さん:
保育士/保育の専門学校の非常勤講師。3-5歳児の異年齢クラスの担任。

田中 岳さん:
幼稚園教諭。5歳児クラスの担任。

三井 彩夏さん:
保育士。企業主導型保育園で2歳児クラスの担任。

【ゲスト】
青山誠さん:
社会福祉法人東香会 上町しぜんの国保育園園長

 

今どんな感情を抱き、何を感じている?

青山さん:
今こんな状況になってしまって、地域差はあるにせよ、保育園が休園、縮小して開園というかたちをとることになり、保育の現場に立つ人はいろんなことを考え、感じながら、日々やっていると思うんです。普段だったら、保育や子どものことだけを考えて、一生懸命現場に立っていると思うんだけど、今はかたちの見えない不安や恐怖も感じながらやっているんじゃないかなと。

例えば、自分がコロナに感染したらどうしよう、それを子どもや同僚にうつしてしまったらどうしようとか、うつっちゃったらどうなるんだろうとか。衛生面を気をつけるとかはできるんだけど、そういう先の見えない不安って、根本的になくすことはできないんだよね。可能性を低くすることはできるけど、ゼロにはできない。だから、こんな時だからこそ、保育の現場の人たちが何を感じ、考えているのかを伝え、語り合うことが大切になってくると思っています。

そこで、保育語りbarを主催している4人が、保育者として今どんな感情を抱き、何を感じているのかというのをまず聞いてみたいです。


石上さん:
僕は、最初は“怒っている”から今は“悲しい”です。
最初は、Twitterとかで保育者たちがやめたいということを言っていたり、いろんな団体がこの状況になってもあまり声をあげていないのを目の当たりにして、「うーん」と思って怒っていたんだけど、今はみんながそういうことをせざるを得ない状況が悲しい、と感じています。


神谷さん:
一言でいうと、 “もやもや”ですかね。
この状況になってから、いろいろなことの板挟みにされている感じがしています。保育園って保護者を助ける、子育て支援の役割もあると思うんですけど、保護者に自粛をお願いしたりしなくちゃいけなかったり、でも一方で、危険だから家にいてほしいとは思うけど、子どもたちは大丈夫かなというのも心配だったりして。


田中さん:
少し前までは“怒っていた”んですけど、今は“わくわく”に近い状態です。
僕の勤めている幼稚園は、6月に入って分散登園がはじまる予定なんですが、子どもたちに久しぶりに会えることがすごく楽しみです。あと、例年通りの活動が今年は一度白紙になっているので、職員たちと「子どもにどんな経験をさせてあげたいか」とか、「どんな保育をするのか」をじっくり話し合っているし、ここからも話し合っていける気がするので、不安もありますが、保育がはじまるのにわくわくしています。


三井さん:
“ふわふわ”という感じですかね。
いろんな情報があって、自分が何を取捨選択すればいいのか分からなかったり、その時々で状況がどんどん変わってしまうので、どちらを見ていけばいいのかな分からなくなったりします。今までは一生懸命子どものほうを見ればよかったけど、それだけではいられない状況になって、どこに立てばいいんだろうと。


人に話すことで感情は変わっていく

青山さん:
聞かせてくれて、ありがとうございます。

みなさんの話を聞いていて面白いなと思ったのは、感情って変わっていくんだなということ。そして、その感情が変わるきっかけって、人に話すことにあるのかなということを感じました。

みんなはきっとこの語りbarっていう場があって、いつもじゃないかもしれないけど、当初持っていた怒りや不安を吐き出すことで、それが違ったものに変わったり、収まったりしたんじゃないかなあって。

石上くんがTwitterの話をしていたけど、僕もこの状況になってからよく見るようになりました。そこで感じたのは、Twitterにつぶやくことって投稿できる文字数が少ないということもあると思うけど、感情的な、しかも怒りという感情が多いということ。

保育者の人もいろんなことを書いていますよね。その書き方は、100パーセント賛同できるものじゃないのもあります。きつい書き方しているなとか、保護者に対しても、子どもに対しても、これはあんまりじゃないかなというのはある。でも一方で、こういうかたちでしかみんな感情を言えないのかなということも感じました。匿名で、しかも知らない人だからこそ言えるのかなって。

でも、人と話して怒りや不安を吐き出すのと違って、Twitterは「いいね」やリツイートが多くつくと、それがどんどん拡散して手元から離れていってしまうし、賞賛されてしまうこともあるから、どんどん拍車がかかってしまうんじゃないかなということが気になりました。気心しれた人と話していく中で変わっていく感情と、またちょっと違う感情の動きをしてしまうのかもと。


感情が人を動かす

ただね、怒りという感情もすごく大事だと思っています。人を動かすのって理屈じゃなくて感情です。

例えば、今回町から人がいなくなったと言われたくらい多くの人を自粛させたのって、やっぱり不安や恐怖という感情でした。感情が人を動かすのであって、理屈で動いているんじゃないと思うんです。

だからTwitterも理屈のところは全然賛同できないんだけど、保育に関わる人が今こんなに社会に対して怒っていると言うことは、すごく大事だなと思います。

具体的なことをいうと、休園になるかならないかって問題がありましたよね。東京都の23区内だけでも、対応がバラバラに分かれて、こっちは休園、あっちは縮小、開園ってなっていました。それって市区町村の色が見えるといういい面もあるけど、政治的な動向にすごく左右されてしまっているということでもあって、肝心の子どもの命や健康が一番に考えられなくなってしまっていました。

あとは、医療従事者の方に感謝という気持ちは本当にその通りだと思うけど、保育者には危険手当も労災もない中で、充分に感染予防に気をつけながら開園し続けていたのに、コロナに感染した途端、ある意味晒し者みたいになることもありましたよね。

そういうことに対して、「おかしい」と声はあげていきたいし、怒る時には怒ったほうがいいと思うんです。


今の状況はチャンスでもあるし、ピンチでもある

でも、良くも悪くも感情って過ぎ去ってしまうんです。怪我をした時の痛みがひいていくのと同じで、なくなっていってしまう。

だから、置かれた状況に対して半歩でも一歩でも関わっていくのか、それとも受け手になっていくのか、ここから一人ひとりの行動が大事になっていくと思います。

もし受け手になってしまったら、保育がよりサービス化していったり、コロナというあんなに大変な時でさえ変わらないで済んだから、保育者や保育園の社会的地位も別にそのままでいいよねとなって、前より状況がひどくなる可能性だって考えられます。

つまり今のこの状況は、チャンスでもあるし、ピンチでもある。ピンチでもあるけど、チャンスでもある。だからこそ、このみんなの感情が過ぎ去ってしまう前に、たくさん話し合っていくことが本当に大事になっていくと思います。

例えば、保育所保育指針に保育所の役割として「入所する子どもの最善の利益を考慮」すると書いてあるけど、「本当にそう?」と議論していく。子どもの最善の利益って一概に家にいることとは思ってないけど、保育園になにがなんでも来ることでもないとしたらなんだろう、どう思う?って。答えを出していくというよりも、園という場に集ったおとなが、親も保育者もみんなで話してみることがすごく重要です。

今回、僕の勤めている保育園ではいろんな保護者が声をかけてくれたり、お菓子を差し入れしてくれて、こんなに園のことを心にかけてくれてるんだって、改めて感じました。だから、保護者との関係もまかり間違えると社会の下請けで終わってしまうけれど、これを一つのきっかけとして、共生の場所になりうる可能性もあると思うんです。

そう考えた時に、さっきから何度も伝えていますが、この感情がみんなの中に残っている時が肝になる。

この機会に形にしろと言うわけではないですが、いっぱいいっぱい喋っておくことがすごく大切な気がしています。

***


「コロナ後の保育ってどうなるんだろう?」「何を軸に保育をしていけばいいんだろう?」。
 保育語りbarの4人から青山さんへの質問は、後編でお届けします。

withコロナの今、現場から青山誠さんへの一問一答

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