子どもたちの遊びのなかに“コロナ”が出てきたらどうする…?
子どもたち自身も、自分なりにその状況を察知したり、理解したり、敏感になったり、戸惑ったり、受け止めたりと、それぞれに何かを感じているのではないかと思います。
日常のなかで、子どもたちからウイルスの話題が出てきたり、日頃の遊びのなかにウイルスに関する内容が取り入れられている、なんてこともあるかもしれません。
大人としては、できるだけ不安にさせたくない、という気持ちがありつつも、そういった子どもたちの姿を、どのように受け止めていったら良いのでしょう…?
以前、HoiClue[ほいくる]で紹介した、IPA「危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のガイド」。(記事についてはこちら)
園の中での子どもの過ごし方や、保護者とのやりとり、子育て支援を考えるにあたり、大きなヒントになりそうな「危機的状況における遊ぶことの重要性」が掲載されているこのガイドのなかには、「喪失、病気、そして死といった、つらいテーマを含む遊び」についても記載されています。
新型コロナウイルスや自然災害など、何かつらいテーマを含む遊びをしている場面に遭遇した際、その遊びをする子どもへの理解を深めるために…
今回は、IPA「危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のガイド」から、つらいテーマを含む遊びについての記載部分をご紹介したいと思います。
喪失、病気、そして死といった、つらいテーマを含む遊び(IPA「危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のガイド」より)
(以下、引用してご紹介いたします)
⼦どもたちは、楽しみ、くつろぎ、わくわく、交流など、遊びからよいものをたくさん獲得します。また、遊びは、⼦どもたちが困難や恐怖、混乱に対処する⼒を発達させる重要な⽅法でもあります。
ただ、⼦どもの遊びに喪失、死、病気、孤独などのテーマが含まれていると、それを⾒たり聞いたりすることに対して、⼤⼈は苦痛を感じることがあります。みなさんも、そういったテーマが含まれる遊びに対して、つらい気持ちになったり不謹慎だと感じたりすることがあるかもしれません。
もし、⼦どもたちがつらいテーマが含まれる遊びをしていたら、そういったテーマから遊びをそらしたり、守りたいと思うことは当然のことでしょう。それでも、⼦どもたちはこのコロナウイルスのパンデミックの間にも遊ぶことを必要としているし、遊びたいと思うものということは知っておいてほしいと思います。
上記のような遊び(つらいテーマが含まれた遊び)は、次のような点で⼦どもの役に⽴ちます。
・困難な状況に向き合う
・子どもが自分の感情とうまく付き合う
・自分はものをコントロールできていると感じる
・子どもたちが知りたいと思っていることについて質問をする
・子どもたちが人生で直面する他の困難なことに対処する力を高める
つらいテーマが含まれた家での遊びの例
・⼦どもがテレビやインターネットで⾒たり聞いたりしたシーンを⾏動で表現する。
(例:病院の病棟や葬儀のようす、苦しんでいる⼈や助け合っている⼈々、政治家が発表をしている場⾯など)
・できごとの再現をしながら、その結末を変えていく 。
(例:誰かが病気から回復し始めるような遊びをする。)
・⼤きな問題への解決策を⾒つけるような遊びをする。
(例:ウイルスに関連する名前のスーパーヒーローが遊びの中に登場する)
・ウイルスや科学者、死などを象徴する空想のキャラクターを作り出す。
・テディベアや⼈形、または⾃分の兄弟(姉妹)に何が起こっているかを説明し、これまでにはなかったルールには従わないように⾔って聞かせる。
・感情を⾏動で表現する。
(例:怒り、恐れ、孤独などを表現する。そして、それを⾯⽩おかしくしたり、⼤げさなものにしたり、刺激的なものにしたりする。)
・まるで現実のように、好きな⼈の死や葬式のようすを演じる。
遊ぶことで、⼦どもは⾃分の感情を⼼の中に閉じ込めずに吐き出せるようになる
上記のようなタイプの遊びは、みなさんを不安に感じさせるかもしれませんが、なぜ⼦どもたちがこんな⽅法で遊ぶのかを覚えておくとよいでしょう。
こうしたタイプの遊びは、⼤⼈にとって次のような機会となります。
・⼦どもがどのように感じているのか、向き合っているのかをより理解する。
・⼦どもたちがまちがった認識をしていることに気づく。
(例:ウイルスの広がり⽅やパンデミックが続く可能性などについて)
・⼦どもにたくさんの安⼼感を与える。
・思いやりの表現や葬式の儀式、お祝いに関係するものなど、みなさんの⽣い⽴ちや信仰、伝統⾏事や⽂化に関わることについて⼦どもと共有する。
・⼦どもの年齢にふさわしい情報をより分かりやすく提供する。私たちの気持ちは、⼦どもたちの遊びへの反応の仕⽅に影響します。時には、⼦どもの遊び⽅がみなさんを不快にさせることがあるかもしれません。けれども、そのような遊び⽅が、⼦どもにはとても重要な可能性があると考えてみてください。
ガイドの内容を、どうやって取り入れていく?
「遊び」が、子どもたちが困難な状況に向き合い、付き合っていくための一つの方法になることもある、ということを考えると、できる限りその様子を見守っていくことの大切さを感じます。
一方で、不謹慎だと感じたり、遊びをそらしたいと感じる場面においても、ただただその様子を見守っていて良いのか?と考えると、大人としては葛藤も感じます。
子どもの姿をどのように受け止めていくのか、子どもを見守る大人同士、「こんな姿が見られた」「こんな場面にはどう関わろう?」など相談し合える土壌ができていると、子どもを取り巻く環境をみんなで考えていくことができそうです。
例えば、
・ガイドのなかから気になるテーマに項目をしぼって、読み合わせをしてみる
・ガイドのなかの事例からシミュレーションをしてみる
・実際の子どもたちの会話や遊びから、話をしてみる
・子どもの遊びへの関わり方に迷いを感じていることや、実際に気になっている子どもの姿を元に、話し合ってみる
など。
“子どもにとっての遊びの役割”について、まずは知ること、そして子どもを見守る大人同士での共通理解を深めることが大事になってくるのではないかと思います。
ガイドを読む3つの方法
今回ご紹介した、“喪失、病気、そして死といった、つらいテーマを含む遊び”は、IPA「危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のガイド」に記載されている項目のなかの1つです。
ガイドは、下記の3つの方法で読むことができますので、ぜひチェックしてみてください。
手元に1冊置いておくことで、危機的状況下でも、子どものくらしが(そして大人の心持ちが)少しでも穏やかになる手立てになるのではないかと思います。
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原文:For Parents and Carers: Play in Crisis
文:テレサ‧キャシー デザイン:ヴォテペドロ
日本語版発行:IPA 日本支部
翻訳:嶋村 仁志、堀田 奈都希
レイアウト:矢野 真利那