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年長クラス担任の心構え 第1回 〜初めてでも大丈夫!? 年長クラス担任座談会~

新 幼児と保育
掲載日:2021/03/23
年長クラス担任の心構え 第1回 〜初めてでも大丈夫!? 年長クラス担任座談会~

園で一番年上になる年長クラスは、ほかのクラスや保護者から注目される存在。しかも年度後半は超多忙!でも、だからこそやりがいも大きいのが年長クラス担任です。1年後の笑顔のために、4月の過ごし方が肝心です!

シリーズ第1回は、年長クラス担任のみなさんによる座談会の様子をお届けします。

(この記事は、『新 幼児と保育』2020年4/5月号に掲載されたものを元に再構成しました)

座談会参加者

Aさん
保育歴8年目・年長保育経験2年目
園所在地/東京

Bさん
保育歴5年目・年長保育経験2年目
園所在地/神奈川

Cさん
保育歴5年目・年長保育経験2年目
園所在地/神奈川

Dさん
保育歴4年目・年長保育経験1年目
園所在地/東京

※座談会は2020年1月に実施しました。

初めての年長クラスは緊張とプレッシャーの毎日

――今日は年長保育経験1年目〜2年目のみなさんに集まっていただきました。まず初めて年長を受け持った年はどんな気持ちでしたか。

Aさん  不安もありましたけど、楽しみのほうが多かったです。今の園に来て、初めて受け持った子どもたちの担任に戻れたので、卒園を見届けられるのがうれしくて。

Bさん  えー、私は緊張とプレッシャーに押しつぶされそうでしたよ。まわりからどんなふうに見られるのか気になって……。

Cさん  そうそう、年長になると園での行事も一番レベルを高くしなければならないし、保護者の方にも期待されているから、一つひとつの行事に追われる毎日でしたね。

――Dさんは初めての年長クラス担当ですが、実際10か月やってみてどうですか?

Dさん  私が新人のときに受け持った子どもたちだったので、自ら担任を志願したんですけど、想像以上に難しかったです。

年長クラスは特別な存在

――ほかの年齢のクラスとどこが違う?

Bさん  年長クラスは保育園の顔なんです。大きい行事になればなるほどまわりからの期待度も上がる。

Dさん  年中クラスの保護者の方に、「運動会で年長さんのパラバルーン見るのが楽しみです」なんていわれたり……。

Bさん  前年の年長を超えなくちゃみたいなプレッシャ―もあるし。とにかくやることもいっぱいあって、時間も限られているから、見通しを立てないといけない。

――行事の計画はどのくらい前から立てていますか。

Cさん  行事の2か月前から何をしようか考え始めて、1か月前には子どもたちに教え始めます。年長さんになると覚えが早いので、早めに準備して取りかかれば、本番はそんなに大変じゃないんですが、年長1年目はその早めがなかなかできなかった。

年長だけ時間の流れが違う!?

Aさん  最初に1年分の計画を立てましたね。年長は行事が多いから、とにかく早め早めに動きました。4〜5月のうちから、秋の発表会はこれやるからって、子どもたちにいって、自分もピアノの練習をしだしたりして(笑)。子どもたちに、こういうことやりたいなって、投げかけながら、これだけはやろう、というポイントを絞るようにして準備していきました。

Dさん  それ、1年前に聞きたかった〜。私も前々から考えてはいるんですけど、気づいたら「あれ!?」っていうことが多くて。日々のサイクルはほかの年齢と変わらないのに、1日が過ぎるのが早い。一緒になって遊んでいると、気づいたらお昼、なんてことも多々。

Bさん  年長クラスは時間の流れが違うんですよね。乳児クラスはゆっくり感じるのに。

Dさん  そう、食事ひとつとっても、子どもの食べるスピードが速い。食事の補助をしていてこちらが食べるのが遅くなると、子どもたちに「先生、間に合うの?」なんて突っ込まれることも(笑)。小学校で困らないように、年長は時間内に食べ終わる練習をしているので。

――保護者の方とのかかわりで、年長ならではのことはありますか。

Dさん  前年の年長さんと比べられることが多いです。「今年はやらないの?」とか。ただ、クラスのカラーや子どもたちの個性で毎年やることを変えていくので、保護者の方の要望は聞きますが、こちらの意図を説明して、納得してもらいます。

Bさん  新学期に「1年間こんな形です」と説明しておいたら、後々詳しいことを説明した際も、理解してもらいやすかったです。保護者の方が不安にならないように、何でも先手が大切です。

就学を見据えた環境づくり

――小学校入学に向けて、子どもたちと準備したことやおこなったことはありますか?

Aさん  就学前プログラムがあるので、園によってやり方は違うと思いますが、「長い針が4にくるまでに着替えようね」などと時間を決めたり、お昼寝の時間を2時間から1時間に減らしたりします。

Dさん  それ以外にも、小学校をまねて、○○ちゃんと名前を呼ぶのではなくて名字に「さん」づけで呼んだりします。小学校では名字で呼ばれても、最初は子どもたちが反応しないって聞くので、練習を兼ねて呼ぶんですけど、見事に反応しませんね(笑)。

Bさん  年長の初めのうちは先生というより、友達みたいに話していたのを、就学を意識して、だんだん、小学校の先生みたいに丁寧に話すようにしていきました。ときどき、言葉を変えて先生っぽく話すことで、子どもたちのスイッチが切り替わって、今は集中する時間だって気づくので、そういう変化をつけるようにしていました。

小学校との連携の大切さ

Dさん  うちの区は小学校との交流があまりないので、実際どんな生活をしているかよくわからない。子どもたちが小学校に上がったときに困らないように、もっと小学校とのかかわりを持ちたいですね。

Cさん  うちの地域は保育園や幼稚園の先生向けの1年生の授業参観が設けられているので、そこで様子を見せてもらえて、1年生の先生と情報共有できるのがありがたいです。そこで得た情報をもとに、給食の配膳を練習してみたり、連絡ノート入れを作って、子どもから保護者にお手紙を渡したり、預かったりする練習もしています。

――小学校への橋渡しとなる「要録」を書くために、どんな準備をしましたか?

Bさん  書き始めるのは12月末〜1月ぐらいですが、気になったことや気づいたことは、4月から、年間を通して子どもの姿を書いておくようにしました。気づいたことを10の姿ごとにペンの色を変えて、ふせんに書いておきました。

Dさん  要録用のノートを作りました。ノートの端を切り取って、全員の名前分のインデックスを作り、個々の姿を1週間ごとにメモしています。

Cさん  そのノート、全国で発売してほしい!

手をかけた分、報われる!

――最後に、これから年長クラスを受け持つ保育者の方にアドバイスをお願いします。

Aさん  年長は大変だけど、やりがいがある。自分のクラスを卒園させる喜びは、何にも代えがたいものです。卒園式のお別れの言葉を考えると泣きそうになりますが(笑)、これがあるからこそ、報われます。あと細かいことですが、子どもの写真は4月から意識して撮っておくといいです。卒園アルバムを作るときになって、春の写真が少なかった! となりがちなので。

Dさん  とにかく、よく食べてよく眠ること。自分自身が健康でいることが大切だと、実感しました。休むことも忘れずに。疲れたら、子どもの寝姿に癒されましょう!大変なことは多いけれど、その分先輩たちが気にかけてくれるので、まわりの方々への感謝を一番感じる1年になります。

Bさん 4月は、まずは自分も子どもになったつもりで一緒に遊ぶと、子どもの興味・関心が見えてくるので、そこからいろいろ計画しても遅くありません。困ったときは園長先生や先輩に相談すれば、なんとかなります!

Cさん  年長は一番やりがいがあるクラスだと感じています。やることが多いけれど、子どもたちのやれることも多くなり、選択肢も増えます。保育者としてやりたいことはしっかり持ちつつ、それを前に出しすぎずに、子どもを中心に据えて保育をすると自分も楽しいし、保護者の方も納得します。

文/大石裕美 イラスト/オモチャ

この記事の出典  『新 幼児と保育』について

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