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一緒に見たいのは、戦争を“しない”未来〜こどもと一緒に出会いたい 保育者・作曲家 齋藤紘良さん〜

タケハラ マサコ
掲載日:2020/12/11
一緒に見たいのは、戦争を“しない”未来〜こどもと一緒に出会いたい  保育者・作曲家 齋藤紘良さん〜

保育関係者、編集者や遊び場づくりの専門家…
子どもにまつわる仕事をされているみなさんに聞いてみました。

ー あなたが子どもと一緒に体験、体感したいモノやコトは、なんですか…?

社会福祉法人東香会 理事長で、作曲家でもある齋藤紘良さんのお話をご紹介します。

2020年11月20日に発刊した、ほいくる初の本「こどもこなた」。
その中のひとつの企画「こどもと一緒に出会いたい」に載せきれなかったお話を、web記事特別号としてお届けします。



一緒に見たいのは、戦争を“しない”未来

齋藤紘良さん
社会福祉法人東香会 理事長・作曲家


表現・自然・食を基盤とした保育を実践、500年のcommonを考えるプロジェクト「YATO」、チルドレン・ミュージック・バンドCOINN、季刊誌BALLAD等をプロデュース。2月に「すべて、こども中心」を上梓。


保育の現場では子どもたちと「出会っちゃう」ことがたくさん起きていて、大人からの「出会いたい」という意思はあまり多くないのですが…明確に一つ、大きなものがあります。
それは「戦争しない未来を子どもたちと一緒に見たい」ということです。

戦争を“なくす”ということじゃなく、戦争を“しない”未来。
僕らもまだ見たことがない”戦争をしない”という世界を子どもたちと一緒に出会いたいということは保育の中の重要なテーマとして持っています。


私たちはあまり戦争実感のない現代日本で過ごしてはいるけれど、戦時地域のニュースや大戦当時の話を聞くことがゼロではないですよね。そのような話題を聞くたびに、今から自分の生活環境が戦時中となったらどうなるかを想像します。

戦争は人の一生を巻き添えにしながら行われるわけですが、もし自分の周りの人たちや家族が戦争によって死んでしまうことになれば、もうどうしようもなくめちゃくちゃに悲しい感情が流れ出ることになるでしょう。
例えばそれは事故や病気で身近な人が亡くなることとは訳が違う。時間をかけて精神の整理をしていくことなど困難で、悲しみから生まれる感情の矛先をきっと敵に向けるんだろう、と安易に想像します。

一方で、西暦後の世界では戦争がなくなったことはなく、戦争を引き起こす要素は私たちの文化の根底にあるのかもしれないと考えています。今の暮らしや文明を一度全て捨て戦争のない世界を最初から作り直そうとは思えません。むしろ、これまで積み上げてきた人類の歴史に「戦争をしないためにどうしたらいいのか」を加えて考えていくことが、人類の大きな命題だと思います。


話が壮大になりました。保育に戻しましょう。

子どもと何に出会いたいかは、つまり「戦争をしないための技術」です。
それ以外のことは大雑把に言ってしまえば、彼らが自分たちで見つければ良いのではないでしょうか。私たち大人もこれまでそうしてきました。しかし、戦争が一度起きてしまうと関心あれ無関心であれ強制的に巻き込まれてしまう。
ですから、保育の中で、子どもたちとの日常の生活の中で何か問題が起きた時には、やはり武力ではなく対話を通した意思の混ざり合いで解決に向かうことが大事だと思います。

子どもたちとはよく話し合いを行います。
もし生活の中で感情が爆発した時には相手を傷つけないことは大前提。でも、感情を体内に押し込めるんじゃなくて…感情はどこかで出さないと必ず別の何かに変換されてしまうから、その感情の“出しどころ”を子どもたちと考えたり、こういう風にしたほうがいいんじゃないかなって、話し合いの中で提案をしたりしていますね。


子どもたちと日々の生活をしていると、彼らが武力でなく対話によって物事の解決をする場面に出会うことがあります。およそ4〜6歳くらいにその能力が発揮されることが多く、大人は彼らに見習うべき点が多くあります。

保育園に、プログラミングのおもちゃがあるんですね。盤にブロックで移動経路を組み込んで、ロボットがマップの上をその通りに動くもの。
子どもたちは話し合いながらロボットの目的地を決めてプログラミングし、それを軸にロボットを動かしていきます。

ある時、みんなでそのおもちゃで遊んでいたら、Aくんが、次の目的地までの最短距離のプログラムを編み出しました。それで周りの子どもたちは、Aくんすごいね、って感じになって。
そこにBくんが、遠回りで非効率的な、別の道を示したんです。すると、みんな「Aくんの方がいいんじゃないか」と話します。

Bくんはちょっと泣きべそをかいて落ち込みながらも「ぼくの道もやりたい」と言う。
周りの子どもたちも折れて「じゃぁ、Aくんの最短距離とBくんの遠回り、両方の道をつくろう」っていうことになったんです。

実際にAくんの最短距離を試してみると、みんなは「すごいすごい!」という反応になりました。
そしてBくんの遠回りの道。やってみた後に、Aくんから「やってみたら遠回りのほうがおもしろかった」という言葉が出たんです。
「あ、(戦争をしないための技術は)これかな」って、思いましたね。

みんなで一緒にやってみた時に感じた共有性とか、自分の想像以外のことを一旦受け入れてみた後に湧き出てくる、思いもよらない“快”の感じ。無自覚に自分の感情が出てしまった後に、その場をもう一回通常に戻す雰囲気。

そういった世界観を保育中の対話によって引き出していけたら、子どもと共に出会いたい“戦争をしない未来”というのは、すこしずつ見えてくるんじゃないかなと思っています。


子どもと育てていきたい人生観、ですかね。
子ども自身の人生もそうだし、自分自身の人生もそうだし。
保育園だけで終わらないものを、共に、育てていきたいです。

***



インタビュー・文/竹原 雅子



このインタビューが掲載されている、リトルプレス「こどもこなた」


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