乳児保育の8つの「困った!」check&advice~第2回 1・2歳児担当へのアドバイス〜
たとえ3歳以上児の保育経験が豊富な保育者であっても、初めての乳児保育は「こんなはずじゃなかった……」なんてことの連続です。
乳児保育者が悩まされがちな困りごとについて、東京家政大学ナースリールーム施設長の工藤佳代子先生からアドバイスをいただきます。
第2回は、8つの「困った!」のうち、1歳児と2歳児の保育でよく聞かれる4つをとりあげます。
(この記事は、『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2019春 に掲載されたものを元に再構成しました)
お話を聞いた人
工藤佳代子先生
東京家政大学ナースリールーム施設長(取材当時は主任保育士)。
「乳児保育は、保護者にも“初めて”のことが多いもの。子どもに加えて、保護者や家庭も受けとめていく姿勢が大切です」
「困った!」① かみついちゃう子をどうフォローする?
check!
「かみつくしかなかった」子どもの思いに寄り添う
アドバイス
「かみつき」や「ひっかき」が起こるのは、言葉では伝えられない思いがあるからです。保育者の役目は、「思いを表現する方法はほかにもある」と伝えていくことです。
かんでしまった子を叱るのは逆効果。自分を否定する人からの言葉は心に響かないからです。
まずは「~って思ったんだよね」と声をかけるなどして「気持ちをわかろうとしている」姿勢を示しましょう。そして本人が落ち着いているときに、「かむんじゃなくて、やめて、っていってみたら?」などと話してみましょう。
「困った!」② 友達とケンカしてばかりの子がいます
check!
「解決する」ことを最優先していませんか?
アドバイス
ケンカは自分を表現したり、相手の思いを知ったりするチャンスでもあります。まずは、ケンカの背景を考えます。おもちゃやスペースの不足など、当人以外のことが原因になっていることもあるからです。
そしてそれぞれの思いを聞き、しっかり受けとめましょう。頭ごなしに叱られたり、謝罪を強制されたりすると、子どもは自分の気持ちを表現できなくなってしまいます。
目先の解決に走らず、子どもの「育ち」を助けるかかわり方を心がけましょう。
「困った!」③ あれもイヤ、これもイヤって……
check!
「方向性を決める言葉」をかけていませんか?
アドバイス
「イヤ」「ダメ」が出てくると、私は「おめでとう!」といいたくなります(笑)。「イヤ」は、自分の意思を言葉で伝えられるようになった証拠だからです。
「イヤ」といわれたら、続く言葉を想像し、それに答えていきます。
「イヤじゃないでしょ」「○○しようね」など、否定したり大人が方向性を決めたりするのは避けましょう。自分の思いを尊重してもらえるとわかれば、子どもはどんどん意思表示をするようになります。
この時期に「イヤ」をどれだけ引き出せるかが、保育者の腕の見せどころですよ。
「困った!」④ 子どもがなついてくれません
check!
「子どもをひきつける」保育者を目指していませんか?
アドバイス
「子どもがなつく=子どもをひきつける人気者」ととらえているとしたら、それは自分本位の見方です。保育者に関していえば、「子どもがなつく」とは、「子どもに信頼される」ということです。
子どもは、信頼している相手とは距離をおけるもの。「自分を理解してくれる人がいる」という安心感を背景に自由に行動し、必要なときだけ、手助けを求めるのです。
子どもを見守り、求められたときにはさっと手を差し伸べられる……。そんな保育者が、本当の意味で「子どもになつかれている」のです。
文/野口久美子 イラスト/すみもとななみ
この記事の出典 『新 幼児と保育』について
新 幼児と保育(小学館)
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この記事の連載
乳児保育の8つの「困った!」check&advice~第1回 0・1歳児担当へのアドバイス〜
乳児保育者が悩まされがちな8つの困りごとについて、東京家政大学ナースリールーム施設長の工藤佳代子先生からアドバイスをいただきます。
第1回は、0歳児と1歳児の保育でよく聞かれる「困った!」をとりあげます。