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みんなの園の震災対策〜アンケート結果から考える避難訓練・防災対策〜

竹原 雅子
掲載日:2021/03/10
みんなの園の震災対策〜アンケート結果から考える避難訓練・防災対策〜

災害が発生しやすいと言われている日本で暮らす私たちにとって、「もしも」はいつ、どこで起きてもおかしくない状況にあります。

子どもたちを守るために、保育者の皆さんは普段どんな対策を行なっているのでしょうか?
皆さんから寄せられたアンケート結果と声をご紹介します。

実施期間:2021年3月3日〜2021年3月8日
回答数:118 件


もくじ

地震を想定した避難訓練をどれくらいの頻度で実施している?
避難訓練と合わせて、“保育者自身”が毎回行なっていることは?
避難訓練と合わせて、“子どもと一緒に”毎回行なっていることは?
「毎回行なっていること」以外に、地震の避難訓練の際、子どもと一緒に取り組んでいることは?
避難訓練の他に、震災対策として日頃から行なっていることは?
特に力を入れたり、工夫したりしている震災対策は?
いま取り組んでいる震災対策について、疑問に感じていること、課題に感じていることは?
震災対策、その他の災害対策について、知りたい情報は?
アンケートに協力してくださった方の属性について


みなさんの園では、地震を想定した避難訓練をどれくらいの頻度で実施していますか?

「毎月1回以上」という回答が60%以上、多くの園で毎月、地震を想定した避難訓練が行なわれているようです。
また隔月〜3ヶ月に1回のペースで実施する園も全体の1/3を超えており、実施頻度は大きく分かれる結果となりました。


避難訓練と合わせて、“保育者自身”が毎回行なっていることは?

全体の8割以上の方が「避難訓練の振り返り」「避難手段の確認」を行なっているという回答でした。毎回の訓練の振り返りや確認から新たな課題を見つけ、次の訓練や「もしも」に活かしているようです。

「避難ルートの確認点検」「避難時の持ち物確認」はおよそ6割、「地震発生時の園内での情報伝達方法の確認」「避難時に子どもが使う物(防災頭巾や上靴等)の状態確認」「避難訓練時のマニュアルやルール等の確認」は5割以上の方が実施しているという結果に。
定期的な避難訓練が、地震発生を想定した対策や常備品を再確認するきっかけとなっていることがうかがえます。


避難訓練と合わせて、“子どもと一緒に”毎回行なっていることは?

「避難の際の約束事の確認」は回答者の9割近い人たちが行なっていました。「もしも」のときにどのような行動を取るのか、子ども自身が保育者とともに確認し身につける機会になっているようです。

また約5〜6割の方たちが、子どもたちと「避難訓練の振り返り」「避難手段の確認」「避難ルートの確認」も実施しています。毎回必ず振り返りや確認をすることで、子どもたちの中に避難時の対応がしっかりと定着していきそうです。

「避難時に子どもが使う物(防災頭巾や上靴等)の状態確認」は全体の4割ほどが実施。
子どもが自分の持ち物の状態を主体的に把握し、日頃から防災用品を備えておく大切さを学ぶきっかけになりそうです。

「毎回行なっていること」以外に、地震の避難訓練の際、子どもと一緒に取り組んでいる事は?

・予告なしで突然の避難訓練をやっています。

・津波を想定し、公園でなくいつもは行かない階上の別の提携施設に非常階段を使って行く。171を使い、保育者・保護者とも使い方を確認し、避難場所にて引き取り訓練をする。

・午睡中に地震で避難する事も想定し、上履きと帽子を午睡時に必ず布団の横に置いている。

・裸足保育なので、上靴を履いて逃げる練習。


・避難靴を履いて、大きさを確かめる。

・さらしを使用したおんぶの練習。窓ガラスなどが飛散したことを想定してブロックや卵の殻の上を歩く体験。

・地震からの火災などの避難訓練や水害、害獣避難訓練を毎月行なっている。

・消火訓練。
炊き出し訓練。

・水害や地震についての絵本を読み聞かせる。

・地震に関する紙芝居を読んだりイラストを使って、自分を守る(頭を守る)ことの大切さとその方法を確認出来るようにしています。

・訓練時以外の時間にヘルメット選手権を開催して自分でヘルメットをかぶる、いかに早く被るかをゲームの様にしながら練習。


・お、は、し、も のルールの確認。

・電柱や電線、落下物など予想されそうなものを、子どもと確認する。

・泣いてしまう子を“よしよし”したり「大丈夫だよ」と励ましたりする習慣。

・地震は怖いものだけど恐怖だけではなく、私たち先生が絶対に守るからね。と安心してもらえるように話すようにしています。

・遊びの中に、卵パックなどを踏ませたり、避難する時はガラスに見立てて踏ませないようにしている。


・賞味期限が近いストック食品を食べる。

・非常用衣類を預かり外の倉庫に保管。

いつどのように起きるのか想定できない地震に向けて、予告なしの訓練や定期訓練とは違う手段やルートを使っての避難の練習など、さまざまなパターンの訓練を子どもと行なっているという声がありました。あわせて水害や消火の訓練を行なうという園も。

子どもたちが「もしも」の時の様子を具体的にイメージしやすいよう、絵本や紙芝居を読んで話し合っている、という現場も多いようです。

恐怖感をあおらないよう、何かあった場合でも保育者がいるよ、というメッセージを合わせて伝えているという取り組みも、印象的でした。


避難訓練の他に、震災対策として日頃から行なっていることは?

約7割近くの方々が「保護者の緊急連絡先、連絡方法の確認」を意識して行なっているという回答。携帯電話番号や勤務先の変更など、保護者の連絡先が変更になる場合は度々ありそうです。
日頃保護者とコミュニケーションをとりながら、あわせて正確な連絡先を把握している現場も多いのではないでしょうか。

次に多かったのが「AEDの設置」「落下防止、転倒防止などの環境整備」「消防点検」。
緊急時に使用する救急用具や消火器具の点検、環境の整備などは、避難訓練での確認を活かし、訓練以外の時間で対応しているようです。

さらに「避難時のヘルメット、リュック等の常備」「災害時の備蓄」「災害発生時のマニュアル作成」「医薬品の整理」などが続きました。災害時の備えは、合間の時間に進めることが多いのかもしれません。

「保護者との避難場所の確認」は、5割近くの方が行なっています。
連絡先の把握とあわせて、避難が現実となった場合の園児の引取りの流れなどは、家庭との共通認識が不可欠な対策となりそうです。


特に力を入れたり、工夫したりしている震災対策は?

・訓練をいつ行なうのかは園長、主任、係しか知らず、抜き打ちで行なっている。その方が常に災害時を意識しながらの保育や、緊張感等、得られることが多い。

・いろんなところへの避難の練習をし、最終は子どもに避難訓練があることだけ伝え、室内と屋外に子どもがいる状態での避難訓練を行なう。

・預かり保育中など、担任以外の職員といる時の訓練もしている。

・訓練時に、幼児が居ないという設定で、職員間での連携。

・保護者の連絡先は必ず部屋と職員室に常備。全職員が必ずメモを持ち歩いてるため、移動する際はメモを貼りながらどのクラスがどこに移動したか、園外に出る時は主任がどこに子どもたちが避難するかメモを貼っていく。

・災害時の保護者の引き取り訓練を2年に一度行なっています。災害発生時、職場から園まで迎えに来る方法の確認、引き取りの際の連携やサインを実際に日付、時間を設定して職場から迎えに来てもらっています。

・洪水の危険がある園なので、近くの川に水位がすぐ分かるように目盛りをつけてもらったり、避難場所となる公民館へ見学に行き、スタッフの方と打ち合わせをしている。

・津波を想定して、隣の小学校と合同訓練を実施し、実際に小学校の屋上に避難する訓練を行なっている。


・園内研修や職員会議でスムーズに避難できるよう話し合いを行ない共有している。


・毎年、東北の被災者の方に話をしに園に来ていただいています。今年はオンラインで聞きました。

・災害伝言ダイヤル、アプリでの情報伝達。

いつ起こるともわからない地震。訓練の時は連携できている保育者や職員が不在の時に発生する可能性もあります。念には念を入れてさまざまな場合のシュミレーションをし、それぞれに対応した訓練を実施している園も多いようでした。

ほかにも、保護者や自治体、近隣の小学校や施設などとの連携に力を入れているという声も。
もしものときには、積極的に手を取り合いながら子どもを守れるよう、備えている様子がうかがえます。


いま取り組んでいる震災対策について、疑問に感じていること、課題に感じていることがあれば、その理由と合わせて教えてください。

・(避難訓練は)保育士が事前に知っているためきちんと進んでしまう。

・予告なく行なっているが、食事中や午睡時、夜は行わないため、そのような時どう対処をするのか。朝晩でスタッフが少ないときは…と思います。

・いざ震災が起きたときの連絡が遅く、訓練が形骸化しているように感じる。

・どこまで悲惨な事態を想定したらよいか。低年齢はバギーカーでの避難をしているが、無理だと思う。

・建物の構造上の避難経路に不安がある。窓からの脱出等、様々な方法での避難を訓練から行なうべき。

・雨天時や気温の低い日には避難訓練を見送ったり、外への避難を控えようとする動きがある。いつ起こるか分からない災害のための訓練ならば1度くらいはしておいた方がいいのではないかと思う。

・訓練では揺れないが、実際の場合は子どもたちが恐怖で泣きだしたり、パニックになることも想定されるので、訓練のようにはいかない。道を挟んで被害の大きさが違った事もあり、どこが安全なのか?など考えてしまう。

・避難場所の小学校が近くにあるが、耐震性は変わらないと思う。校庭に行きつくまでに二次災害が起きてしまわないかを判断してから避難を開始しなければと感じる。


・土曜日、園長不在の場合を想定しての訓練で、実際に土曜日の体制で逃げられるかどうか疑問に思う。

・放送を聞いてから防災頭巾をかぶるって?すぐにかぶっても、いいんじゃない?って疑問に思います。

・毎月(訓練を)してるけど毎回、完璧じゃないんです。くつをはくタイミングがいつも曖昧。足けがしたら逃げられへんって昨日も言ってたけど、正解がわからない。

・園庭を裸足で遊んでいるのだが、自分の靴を取りに行くことが不可能な場合、もしも避難する時は、裸足の子どもたちをどうするのか。

・保育園がオープンしてから3年、避難用滑り台を1度も使用した避難訓練を行なっていない。子どもが遊び用に使用してしまうのを防ぐためとされていますが、それでいいのか…?

・雪国で、秋までは外に避難するが、冬はホールに避難している。皆さんどうしているのか知りたい。そして実際、冬に避難する際にどうしたらいいのか、どこに逃げたらいいのか困る。

・想定して動いてばかり。想定外での判断や、臨機応変に動くチカラなどが求められると感じる。

・フリーのパートの先生への避難伝達方法はどうしているのか?

・正直、3ヶ月に一回しか行なっていないこと。

・うちの園では震災対策、防災訓練の研修は全くなく、毎月防災訓練があるのみ。新しい情報を得て、防災対策のあり方を常に考えていかなければと思う。

・どんな備蓄を用意しているか。

・防犯対策、不審者対策はどうしてますか?

一つ前の「力を入れたり、工夫したりしている点」という質問とは対照的に、訓練で想定していない状況で地震が発生した場合、どう対応したらいいかわからない…という声も、多く寄せられました。

定期訓練で“想定内”の場合はイメージできていても、保育時間や職員体制などさまざまな状況のシュミレーションの不足に、不安を感じている保育者さんも多いよう。
また、被災の状況を瞬時に判断し、訓練とは違う行動や対応をしなくてはいけない場合の想定や備えを求めている方も多く見られます。

特に子どもの動きに対しては、予め子どもと一緒に意識合わせをしておく必要が。
日頃の訓練での避難ルートの見直しや避難手段の課題の発見によって、地震発生時のきめ細かな想定が求められていると感じました。


震災対策、その他の災害対策について、知りたい情報があれば教えてください。

・避難用滑り台やハシゴ等を使用した避難訓練を行なっているのか、またその使用方法が知りたい。

・2階建ての施設だが、同様の施設がどのような訓練・避難の仕方をしてるのか知りたい。(例えば1階が潰れることを考えてどうしてるかなど)

・地域全体が土砂災害警戒地域である。雨の日の災害の場合、どこが安全なのか?適切な情報を役所が出せるのか?不安がある。

・冬の雪国の地域は、避難訓練はどうしてるのか?

・震災の実体験をされた園の先生の話を聞いてみたいです。子どもはどのような状態で助けを待つのか。用意しておくと良いものなど…。

・かなり大きな園児でパニックになってしまう子はどのように避難させるべきか?大きなおんぶひもを用意していこうと思うが、何人もいるため、想定される園児分は用意していますか?

・障がいやアレルギー児等の配慮を必要とする子どもの避難方法の工夫。

・長期を見越して子どもへのケアをどうしたらいいか。どんな事が励ましになるのか。安心するのか。

・近隣との連携について。

・他の園での取り組みを知りたいです。

地震発生時の状況は、地域の風土や気候によっても違いが出そうです。
雪国や土砂災害警戒地域など、園の立地を前提としたシュミレーションや体験を知りたい、という声が多く寄せられました。

またパニックになってしまう子、障がい児やアレルギー児など、きめ細かな対応が必要な子どもたちに対する配慮についても、情報を求める声があがっていました。

いずれも、普段の避難訓練だけではカバーしきれない「もしも」の場合を突き詰めていくことで、なにが起きても対応できる環境の準備や心構えを持ちたいという保育者さんの思いが伝わってきました。

***

今年は東日本大震災から10年。この間にも、予期せぬ大きな地震が各地で発生しています。
その様子をメディアで見る度、災害の恐ろしさとともに、日頃からの十分な想定や備えが、いざという時の判断や対応に大きく影響することも感じます。

子どもの命を預かる保育者の皆さんの災害に対する緊張感は計り知れないものですが、アンケートの回答からは、避難訓練をただこなすのではなく、毎回何かしらの課題や改善点を発見しどんな状況にも備えておきたいと考えている方が、とても多いことがわかりました。

園や現場によって対策の不足や課題はありそうですが、お互いの不安や工夫を共有し合い、様々な事例を自園の備えに役立てていただけたらと思います。

また最後の質問について、「うちの園ではこんなふうに対策をしているよ」という体験やアドバイスがありましたら、ぜひお聞かせください。(▶メールはこちら

今回もアンケートのご協力、本当にどうもありがとうございました。

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